トラウマソフト!日生カキフライソフトの巻


先日、牡蛎で有名な岡山は日生を訪れました。
日生港には、海産物やその他名物が売られる「五味の市」というところがあり、海の無い街に生まれた私などは、あまり見かけない魚介が安くで売られているのが珍しく、なんともイイ感じなのでありますが、その五味の市に入りわれわれがまっすぐ向かった先は……


カキフライソフト!!





ソフトクリームにカキフライを2本ぶっ刺したという、見たまんまの食べ物であります。
こんな現代芸術のような形のとぐろも初めて見ましたね。カキフライ部分は、発泡スチロールで作られ接着されていました。
「カキフライを手にとってクリームをつけながら食べてみてね!」……そうする意味が全然分からないが……。
だが、珍食ハンター(そんなものになった記憶もないのだが)としては、これは食べねばなりません!!




「考えるより食べてみて!」
……この後われわれは「考える」ことの大切さを知るのであった。



「つけちゃいました(はーと)」
ぢゃねぇよ……



グッズ化もされています。鬼のツノのようなカキフライ。








そして! どーん。買いました。250円(上のストラップより現物のが安い)。ソフトクリームにカキフライが刺さっている……それ以上でもそれ以下でもない、まさにそのまんまのビジュアル、まさにカキフライソフトです。
上からかかっているのは、チョコレートでなくさしみ醤油です。






……で、食べてみました。

……。

……。

いや、分かっていたことなのです! ふつうに考えて、そう、ふつうに、考えて、ソフトクリームにカキフライが刺さった食い物が、ソフトクリームにカキフライが刺さった食い物以上のものであるはずがないのです! 端的に言うと、「美味しくない」 ということです。そう、考えれば分かる通りであったのです!!
三人で並びうきうきと買ったのでありますが、意気揚々と並んだ皆の表情が次第に曇っていくのが印象的でありました。
先鋒の犠牲によって事態を悟った三人目はもはや、ひどく沈鬱な表情で250円を払い、けっして美味くあろうはずのないソフトクリームを受け取っていました。あんなに悲しげな顔でソフトクリームを買う人を、私は初めて見ました。 
(なお、彼は、その後暴れ出しました。いろいろ口内と脳内で処理しきれなかったようです。)



それにしても!
観光地にはさまざまなご当地ソフトがありますよね。
私も観光地へ行くたびさまざまな風味のソフトを食べ、ソフトクリームというのはどんな風味も融和させてしまうマジック食品だなあ!と思っていたのでありますが、こんなにも潔く、燦然と違和感を放ち続けるご当地ソフトを私は知りません。
ソフトクリームとカキフライという、(個別に食えば美味しいはずの、) 永久に融和しない二者は、いつまで経っても  ソフトクリーム/カキフライ  と間にスラッシュを引かれた状態のまま、舌の上で、腹の中で、それぞれけっして解け合うことがありませんでした。つまり、ソフトクリームとカキフライを一つの食べ物として食べた、という事実を、いつまで経っても脳が理解することができず、その事実が腹の中で異物感を放ち続けるのです。これは!まさに!心的外傷、つまりトラウマ形成の構造!
トラウマとしてのカキフライソフト!!



「醤油の部分を舐めてすぐにカキフライを囓れば、まだ違和感が少ない!」「醤油のところを先に舐め取ってできるだけ早くふつうのソフトクリーム状態にしてしまおう」 などなど、途中から 「どうすれば少しでも苦痛なく食べられるか」をそれぞれ教え合いながらそれでも完食した私たち……。
五味の市を去ってのちの車内でも呆けたようにカキフライソフトの悪口を言い続け、やっとトラウマが癒えたのは、この後旨いお好み焼きに入ってからでした。
そこのおかみさんに、
「カキフライソフト? 美味しいわけないじゃない! 見ただけで判るわ!」
と言われ、やっと、「そうだよなあ、見ただけで判るはずだよなあ……」と我に返ったのでありました。







なお、とぐろの先におみくじが結びつけられているという珍しい形態を報告しておきます。






追記) だが最初から我に返っておれば食べなかったのか? いや、それでもきっと食べていた! まずいと判っているから食べないなんてつまらない人生だ!我は食う!! 世界中のまずいものを。責任もってぜんぶ食う! なんの責任か知らんけど!!