ちょっと前に、『宇宙船サジタリウス』配信を観ているよというのを書きました。
全77話、期間内に見終えることができるか!? と思ったのでしたが、その後なんとか見終えたので感想を書きます。もう無料配信は終わってるのに今更ですまぬです(誰に対してすまぬのかよく分からんが)。
まず、全体の感想です。
・異常に疲れる!!
1話30分(実質25分くらい?)のアニメのはずですが、1話観終わったら2時間経ったくらいのぐったり感がある! 何コレ! これはdisっているのでなく誉めています。内容が濃い。毎回が劇場版みたいな感じです。
・なのに内容を覚えられない
なぜでしょうか……。次観るときだいたい前に観た回の内容をスッカリ忘れています。子どもの頃好きで観ていたはずなのにぜんぜんお話を覚えていない、と以前書きましたが、むべなるかな、と思いました。
これは内容が濃すぎるせいかもしれません(一話の中でいろんなことが起こり過ぎて複雑だから)。また本作の特徴として「キャラの行動原理がなんか一貫しない」ということがあり(下述)、それも混乱する一因かもしれません。あるいはこちらの記憶力の低下かもしれません………これが一番濃厚かも、最近読んだ本とかも一瞬で内容を忘れてやばい。
・とにかく物騒
「宇宙船サジタリウス」で検索すると「トラウマ」というワードがサジェストされるのですが、たしかに基本的に物騒。「死刑」言い過ぎやろ。こんなん19:30からやってたのか!
二話で早速主人公一行が捕まって死刑になりかけるんですが、この後、「捕まって死刑になりかける→寸前で助かる」パターンが十回くらい繰り返されます。製作陣に捕まりマニアがいたのか?? しかし子供の頃の私は捕まり話が好きだったので、おそらくこういうところに惹かれていたのだと思います。
あと「地割れに落ちそうになる」シーンもやたら多い。子どもの頃「地割れ」をめちゃめちゃ恐れていたのですが、その原因の一端はこのアニメだったのかもしれません。
・登場人物がなんかめちゃくちゃ
登場人物は皆、ダメなところもあるけど正義感あるいいやつ……みたいな話として最初は観始めたのですが、けっこう本気でダメなときがあり、とりわけシビップいびり回(後述)ではコメント欄にガチ怒りコメントが並ぶ始末。
そして、行動原理がころころ変わる! 一応、ラナは金に汚いとかジラフはアン教授のことばかり考えてるとかの設定はあるんですが、それも一シリーズの中で二転三転するんですよね。これって昔のアニメならではの現象なんでしょうか。今だと「ラナはラザニア好き」みたいなキャラ付けをしたらもっとそれを擦り倒す気がします(最後の方はラザニアあんまり出てこなくなってた)。
・とはいえ名作
とはいえやはりこれは、野心作にして名作なのだと感じました。一貫していないところも含め登場人物はやっぱり魅力的だし、宇宙船の作画もかっこいいし、なぜかどの星も地球っぽすぎるとはいえさまざまな異星の設定も奇想天外で面白いし。また、多くのお話が、国際関係や国家権力の風刺になっています。直接的な風刺でないにしてもそうしたものについて考えさせるものになっています。コミカルでありながらリアルで、今こそ観られるべき作品なのではないかと思いました。
せっかく全部観たので、以下、各シリーズの感想をまとめておきましょう。話数とシリーズ名はwikipediaの表記に準じました。
* * *
■ ムー大陸の謎編(第1話 - 第13話)
やはり最初のシリーズが一番面白くインパクトがありました。
第一話は、これからSFアニメが始まる!って感じでわくわくします。トッピー、ラナ、ジラフ、アン教授という個性的なキャラクタが出揃い、第二話では謎の宇宙吟遊詩人シビップが一行に加わります。中小企業で働くトッピーたちのライバル役、大企業の嫌な奴らもTHEライバルって感じでいい。「ライララ村でなんで脚気が治ったのか?」からの展開とか、ほんとうに面白い。
前に書いた通り子供時代の私はラナが好きだったんですが、今見てもやっぱりラナが一番いいですね。関西弁のおっさんのカエルなんですが(知らん人は意味がわからんと思いますが検索してください)くたびれたセクシーさがあり、子供ながらにそれを感知していたのだと思います。「嘘をつくときは標準語」という設定も好きだけど、後半はこの設定あんまり出てきませんでしたね……。
印象的だったところ:
・やはり第6話。「アン教授の恋の秘密兵器」という昔の洋楽の邦題みたいなサブタイトルからは想像できない硬派な話。「ガーレン」率いる「メリカ国」と「ゴルバ」率いる「ソビエ国」の対立と、それに翻弄されるひとびとが描かれます。当時の冷戦を明確に風刺してるんですよね。ガーレン国に戦争協力を強要されるアン教授はどうするのか……?という話ですが、この問題(戦争に協力するのか)はこの後も何度も描かれます。
・「とらばーゆ」という語彙。今の若者は知らんよね。
・ラスト、急に登場人物らが覚醒して「僕たち生きてる!」「みんな誰かを愛してる!」と言い始めるのがちょっと面白い。シビップの歌の謎が解けたけどメロディが変わってしもてるやんか!! でも「完全な正義なんてなくてもなんとかやっていける」というのはこのアニメ全体のテーマなのかも。
・前も書いたけど、4話に出てくるさつまいもみたいな生き物(8話にも色違いみたいなやつが出てくる)かわいいよ~~。この子のグッズがあれば売れると思う。

■ スイード編(第14話 - 第19話)
最終兵器「スイード」をめぐるお話。ムスカみたいなやつが出てきます。第一シリーズは宇宙での意思疎通に翻訳機が必要だったり地球と環境が違ったりしたけれど、このへんから宇宙の宇宙感がだんだんなくなってゆくような……。
第16話はひたすら30分間サイケデリックでした。薬物の摂取によって見るような映像……。第17話は、たまにある「ラナがかっこいい回」であると同時に、この後頻繁に発生する「崖に落ちそうになって手を掴んで耐える」回。
■ ザザー星編(第20話 - 第26話)
「僕たちは失業者!」という子供向けアニメらしからぬ次回予告で始まった第20話、おそらく大人になって本作を観直した人が最も心にしみる回ではないでしょうか。やはり今回の配信を観ていた友人も、この回が一番印象的だったとの由。
ここまで意外になかった地球での日常回であり、登場人物たちの家庭生活が描写されるのですが、ラナの「二十代の希望、三十代の幸せ、四十すぎたらただの人や……」という台詞は、我が家ではしばらく流行語になりました。「四十代になって思うような再就職なんてない」。やめてくれ~!! 何故子供向けアニメで四十代の悲哀を見せられなあかんのや〜!
特筆すべきこととしては、第22話にトッピーの色が間違ってるカットがあったこと。こんなことあるのね。また第23話「美女になったラナ子さん」はなんとなく記憶にある! みんな大好き女装回。しかし女装に特に意味はなく、「抽象画より具象画がウケる」という話……?? 家族を人質に取られて殺し合いさせられる話は現実世界と同じですね。放映当時、孫と一緒に見ていたおじいちゃんおばあちゃんの中には、戦争経験を思い出す人もいたかもしれません。
このシリーズから終わり方がやたらあっさりになってゆきます。またヒロインはだんだん人間ぽくなってゆき、美少女ブームの影響を感じさせます(やや高橋留美子みも感じます)。
■ ダイム編(第27話 - 第32話)
かわいい小動物とかピンクのゾウとかフランケンとかが出てきます。このシリーズも突然あっさり終わった!
■ デルタ星編(第33話 - 第36話)
防寒服がかわいいです。第36話がまたも超サイケデリックでした。このあたりから「サブタイトルでめちゃくちゃネタバレしてくる」のが定番になります。あとラストでシビップが歌って解決するパターンが続きます。
■ 物体Z編(第37話 - 第39話)
第38話のネタバレすぎるタイトルとカオスすぎる展開にめちゃ笑ったけど、これ、チェルノブイリ事故の直後に放映されてるのですね。物体Zは植物を突然変異させる物体。そして、死の商人と核のボタンの話でもあります。すごい。だがラストは力技でした。最初の石はどこへいった??
■ ブリルの宝編(第40話 - 第43話)
ジラフとアン教授の口論では、「養育費」とか「つまらない(男の)プライド」とか、現実過ぎる男女の争いをこれでもかと見せられます。なんちゅうSFアニメや。ジラフは妻であるアン教授より稼ぎが悪く、アン教授はそれを気にしてなくて自分の給料で生活していけばいいと言うのですが、ジラフはプライドから逆ギレをして無茶をするんですよね。厄介すぎる。でもこういうのあるよね。過去の嫌な記憶が思い出されます。
野菜嫌い王の話はホ○エモンの野菜話を思い出しました。あとサジタリウス号の不時着&刑場破壊のところがコベニカー的趣きがあって好きなので、ここだけ繰り返して見たい!
■ ルナ王女編(第44話 - 第46話)
第44話「ウッソォ! ジラフが二重結婚!?」が有数のカオス回だった……というメモをしてるんですが、もう内容が思い出せません。カオスすぎたのでしょう。
■ パラドン編(第47話 - 第49話)
ガミン大統領夫妻の悪辣さがめちゃめちゃリアルでした。怪鳥パラドンを国の象徴としたうえで民衆を愚民化し、パラドンを祀る儀式に民衆を没頭させて飢えさせたうえで搾取する……という、現実でもそこここでありそうな話。でも悪事が明るみに出て革命が成った! 日本もこうなってほしいっす。
この害虫が出てくるのもこのシリーズでしたっけ? こいつ気色悪くてちょっと好きです。なんか吹いてるときの形態が性器すぎる。繭も好き。

■ 宇宙カコ編(第50話 - 第52話)
「命の洗濯してるペポ」というシビップのひどい台詞が輝く第50回。日々に疲れた労働者たちを薬物依存にさせて働かせるという話で、中毒状態を表わす際の絵がすごい。
■ カリン登場編(第53話 - 第55話)
ミンキーモモっぽい髪型のカリンちゃん。男の子かと思ったら実は女の子だった、というあんまり意味のない設定がありますが、これは力の入った新キャラだったんだなと思います。
これもまた「兵器を作るのに協力するかどうか」というテーマなんですよね。今見ても非常にタイムリーです。しかしその描かれ方を見ていると、当時の日本は未だ、戦争協力が絶対ありえない忌避すべきこと、という価値観がデフォルトだったのだなあと感じます。今もこの価値観に立ち返るべきであると考えます。
しかし、そのテーマに親子の情とかなんかものすごいスピードの移動技術とかが絡み、実に複雑なストーリー……。どうでもいいんですが、異星にアメリカっぽい国(メリカ国)があったのに地球にもアメリカっぽい場所(ハンマッタン島)があって笑う。
■ シビップ身売り場編(第56話 - 第58話)
すべてを観終わった後、もっとも忘れ難いのがこのシリーズだったりします。youtubeのコメント欄でガチギレしてる人々がいるのもこのシリーズ。
なぜか突然、トッピーやラナがシビップのドジっ子ぶりに苛立ちいびりまくるのですが、それまでシビップがドジっ子なんて設定は一切なかったのに、何故!?!? それどころかこれまで一同は何度もシビップに命を救われているのに!? 急な設定捏造で意味がわからんし、主人公たちの好感度は大きく下がるし、何もいいことがない回。そこへシビップは故郷のお母さんが病気であることを知るものの、故郷へ戻る金がなく、皆に迷惑をかけていることを気にして誰にも相談できない……本気で胸が痛みます。
そんなシビップにハードボイルド人買いが接近し、言葉巧みに騙して芸術かぶれの金持ちに売り飛ばそうとするんですが、この人買いによるグルーミングがめちゃリアル。実際に人買いってこんなふうに言うんだろうなあ……という感じでこわい!! 「高く買ってもらえれば里帰りもできる」とか「気を入れて働きゃいいことがあるさ」とか「おまえさんは買われてゆくんじゃなくて働きにいくんだ」とか。わーーっ!! この回の脚本の人、やばない!?!?(なぜか勝手にシビップをドジっ子設定にしたことも含めて)
ラストは特になんも解決せんままなんとなくいい話になって終わりました。
■ デルダン編(第59話 - 第61話)
怪物として恐れられているものが実は先住民やった……的な話。先住民族を祀りつつ悪魔化して迫害する話! 『進撃の巨人』みたい!
■ 国境の壁編(第62話 - 第64話)
サジタリウス号が不時着した場所はある星の壁の上。そこでは壁で国がふたつに分断され、東西に分かれて争っており、トッピーたちは東西それぞれの国に分かれて捕虜にされる……という話。明らかにベルリンの壁をモチーフにしていると思われます。
トップが戦争を始めたせいで物資がなくなり民衆が困る様子も描かれていて、まさに今の日本やないか!
非常にシリアスなテーマであり、かつ女王らのキャラも立っていて、終盤ではウルトラCの快キャラが登場……!というシリーズでありながら、なんと最後は尺足らずみたいにして急に終わる!
■ カニロボット編(第65話 - 第67話)
突然の美女。なんというか……こういう女の人、いましたよね。ちょっと蓮っ葉でクールで心に傷を秘めた……。制作陣の好みを感じます。ストーリーは妙に複雑。
■ アンドロメダの雫編(第68話 - 第70話)
ブラックホール回がすごい!! 前衛的! これ、子供の頃見たの怖かっただろうな。
それにしてもシビアな金の話が多い!!
■ カメの赤ちゃん編(第71話 - 第73話)
人びとをA級~C級で分断する社会の話。子どもの頃に「学歴社会」についてのドキュメンタリーみたいのを観てすごく怖くなったのを思い出しました。
そして、「今回のテーマは差別社会か~」「おお、生殖技術の問題にも触れるのか!」と思っていたら、ほ~畑工場……ん? プランクトン? 変なやつ出てきた! 宇宙船小さくなった! カメ可愛い! ………で、突然カメの産卵を見て皆の気持ちが変わってゆく(!?)という予想もつかない展開。(舞台は異星なのだが普通に地球ぽいカメがいる)
最後、星の人たちが「あの人たちが教えてくれた……」とラナたちを思っていい感じになるのですが、ラナたちは特に何もしていなかった気がします。
■ フェロー編(第74話 - 第77話)
こ、こんな終わり方ある!?!? 最終回のタイトル「別人? 記憶喪失? うりふたつのトッピー」が、最終回感皆無ですごい!!
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こうやって書いていると既にかなり内容を忘れています。有料で観られるようなので、みなさんもぜひ観てみてください! 特に人買い篇の衝撃を語り合いたいです。