本日の絵馬自傷






台風の翌日、縁切り神社を訪れました。
境内の其処此処に前夜の暴風雨の爪痕はうかがえたものの、絵馬は、多少泥の飛沫の散っているものはあれどおおむねきれいで、ああこの神社はひとびとの願いがこめられた絵馬を、ほんとうに大事に扱っているのだなあ… と分かりました。
しかしその絵馬には、鴨川の濁流どころではない泥流の恩讐が渦巻いてゐたのであります……

以下、年末以来の収穫をお届けします。
ところで今回はひとりで訪れたため、いつもより余計にこたえました。なぜこんなに精神にダメージを負ってまで絵馬を収穫しにいくのか不明ですが、あねにより、この行為を指す「絵馬自傷」という語を頂戴しましたので、以後、用いたく思います。


【ジャブ】

まずは軽く定番絵馬から。なんでみんな絵馬を前にすると、ちょっと言い回しが古風になっちゃうんでしょうね。いーですね。





【裁判三兄弟】

今回精神的にこたえたのは、裁判・調停ネタが多かったからであります。
裁判とかなんとかいうのは、もうその厳めしげな雰囲気だけで疲れてしまいます。
厳めしげな外観の中にどろどろの愛憎が渦巻いているところがまた人を疲れさせるのでありましょう。
とある所用で裁判所に行ったことがありますが、その際も大いにダメージを受けて帰った記憶があります。
以下、裁判三兄弟です。









これ! これです!
養育費減額を願うのみならず、わざわざ付け加えられる 「不幸になり死んでいきますように」!! スパッ! (自傷音)

それにしても昨今不況のためか、不倫や離婚にあたって、以前はさほどきっちり請求されなかった慰謝料が、請求されることが増えたと何かで聞きましたが、実際そうなのでしょうか。
いつも見る(見るなよ)修羅場まとめやHagexブログでも慰謝料の話をよく見ます。
養育費など実際にかかるお金は別として、婚姻関係にまつわる慰謝料というのはふしぎなものであるな、と感じます。というか、愛情関係に金が絡む、慰謝の必要が発生する、婚姻という制度は、ふしぎなものであるな、としみじみ思うのであります。




【呼びかけ】

わかったよ、トム。俺達も絶対にこのタイト・ロープからはおっこちないようにする。
という文がありましたが、縁切り神社の絵馬は、なぜか(神以外への)呼びかけ系が多いという点も特徴です。
たとえばこれ。



息子さんのひきこもり脱却を願うお母さん。
しかし、神への祈りという体裁をもはやとっていません。息子への手紙やん…

毛色は違いますが、これも。



「仕事熱心なのは分かりますが」 と最初は丁寧語だったのが、次第にエキサイトしていくさまが見てとれます。
「地獄へおちて考えなおせ」 というフレーズが秀逸。さらに、「仕事ができなくなるよう」から「地獄へおちて」への飛躍が凄い!!
でもこれ実際、職場でよく起こる問題ですよね!



九州男児

九州男児も大変です…… 最後の一文に、まだ残る情を感じます。




【お母さん絵馬?】


出ました。お母さん絵馬と思われます。静かで簡潔な文章、端正な筆跡に念が滲みます。
なんで年齢書くんだろう?





【何を言っているのかわからない】


ちょっと何を言っているのかわかりませんが、人間の欲は多様でかつ果てしないということが分かります。



解読できる限りでは、
・代引きが残荷にならない
・結婚したい
・世の中の景気がよくなってほしい
・胸をさわってもらい浮気しない
・無料で乳がもみたい
などのお願いが読み取れます。
???


【彼氏】



まず最初は、義父母への恨みから始まります。
「私が受けた以上の苦しみを…」 など、激烈なフレーズにどきりとするものの、そうだよなあ、義実家との関係がストレスなのはつらいよなあ、分かるよー、うつにまでなって気の毒に…、うんうん、早くご主人と「仲良く暮らせ」るといいですね…… と読み進めていくと、終盤へ来て、

「私の彼氏K君が、奥さんと不仲になり、私に会いたいと連絡がきますように」


!?!?


わあああー!! だから縁切り神社は大好きだよー! だから絵馬自傷は、だから人間はやめられないよー!
人間は最高だ!!


まだまだあるんですがここまでで過呼吸になりそうなので次回に回します。
#ちなみに上の絵馬、「健康」を「健痛」と書き損じているのが非常に気になります。