思い出の食べ物(2) 錦林パンのカスクートとコクリコのプチケーキ


左京区、岡崎のあたり。子供の頃は毎週末、そこに通っておりました。母の実家があったからです。

母方の親族たちはみんなちょっとユニークで、しかしほがらかでおおらかであり、私は、自分の家や幼稚園・小学校では出せない自分をそこではのびのびと出せたものでした。日曜の夜、帰らなあかん時間が来るたびに、いとこたちとともに泣きわめくのが恒例となっておりました。
黒谷さんや聖護院、今ではスッカリ観光地になっておりますが、あのあたりは子供の頃の遊び場で、今でも心の故郷です。(まあ、物理的故郷も京都市内なのでたいして離れてないのだが。)


夏休みや冬休みは、長い期間、母実家に宿泊しました。
我が家は、朝ごはんはめいめいパンを焼いて食べるという式でしたが、母実家では朝から和食でした。祖母は早起きで、朝5時頃に目を醒ますともうおばあちゃんが台所に立って味噌汁を作っている音が聞こえ、その音を聞くとなぜかこそばゆい気持ちがするのでした。
和食に飽きると母は、われわれを連れてパン屋にパンを仕入れに出かけるのでしたが、それが錦林パンでした。


錦林パンは、どの町内にもひとつはありそうな街のパン屋さんでした(ちなみに京都はパン大好きで至るところにパン屋があるのですよ)。
アンパンマンの形のパンや、チョコレートにドレンチェリーが乗ってるパンなど、キッズの胸をときめかせるパンもたくさんありましたが、私が最も好きだったのは、カスクート! 今思えば、素朴で値段も安かったと思うのですが、当時の私にはおしゃれで大人なパンだったのでした。
何が大人かというと、ギザギザのチーズが入っているのです!
私の知ってるチーズは雪印のスライスチーズだけだったので、この厚めのギザギザチーズがなんだか大人っぽくて都会っぽい食べ物に見えたのです。あと、チョココルネとかと違って野菜(っていってもレタスだけ)が入っているところも大人っぽい!
母実家には若い叔母もいたのですが、この伯母もよく錦林パンのカスクートを買って食べており、それが妙にかっこよく見えたのを覚えています。



長じて、母実家近くの大学に通うことになったのですが、その頃にはもう錦林パンは閉店してしまっており残念でした。先日前を通ったところ、まだお店のシャッターは残っていました。





錦林パンの近くにはコクリコというケーキ屋さんもあって、ここも好きでした。母実家にお土産をもっていくときは、ここで「プチケーキ」を買うのです。小さなケーキを選んで詰め合わせてもらって、それも、「美味しいものをちょっとずつ」というのが大人っぽい〜!と思っておりました。親がプチケーキを選ぶのを横で見ているのは、わくわくする時間でした。
小さなタルトにキウイなどフルーツが少しだけ乗っているものや、チョコレートケーキ、ムースのようなものもあったかな? 私はホワイトチョコを使ったケーキが好きで、それの味は今でも思い出せます。

コクリコは、お店を入ったところにでっかいウェディングケーキ(の作り物)が飾ってありました。当時の自分の背よりずっと高くて、白くて、可愛く飾り付けられていて憧れだったので、叔母の結婚式で初めてナマ・ウェディングケーキ(コクリコのものではなかったですが…)を見て「おおおー! 憧れのウェディングケーキ!!」とテンション上がったのに、それが切り分けられて出てきたので、「ええっ!あのまま食べるんじゃないのか!」と落胆したのも覚えております。