思い出の食べ物(1) 明治亭のグラタンドリア


エピソード記憶には強い方だと思っていたのですが、30代も半ばを過ぎて、「ちょっと前まで覚えていたことを忘れているぞ!」ということが増えました。
幼稚園や小学生のときのできごと……「20代までは覚えていた」という記憶はあるのに、その内容についての記憶がない! 20代まで覚えていたならもう忘れないだろうと思っていたのに!


なので、これからは、忘れたくないことなどをちょこちょこ書き留めていこうと思います。
基本、忘れたいことのほうが多い人生ではありますが、忘れたくないことといえば食べ物の思い出。
子どもの頃の好きな食べ物は色々ありますが、中でも好きだったのは「グラタン」だったと思います。母はよく、「晩ごはん何がいい?」と訊いておきながら、私が答える前に「どうせグラタンって言うんやろ」と先回りしていたので、よほどグラタングラタン言うてたのだと思います。
中でも思い出のグラタンは、明治亭のグラタンドリアです。


我が家は、外食文化がほぼ無い家でしたが、そんな中ときたまの外食といえば「明治亭」でした。
白川北大路のあたりにあったそうですが、、私が4、5歳の頃なので場所の記憶は全くありません。
ファミリーレストランだったそうですが、ちょっとよそ行き感あるファミレスだったような。ちゃんとテーブルクロスとか敷いてあったんじゃないかなあ。


で、そこに「グラタンドリア」というメニューがあり、それを初めて知ったとき、「こんな私のためのような、夢のような食べ物があるなんてーーー!」と、超幸せな気持ちになったのを覚えております。
私は、その頃「グラタン」にくわえ「ドリア」というものを知ったばかりでした。「グラタン」のほうはたまに母が作ってくれていましたが、母のレパートリーに「ドリア」はなかったので、どこかよそで知ったのでしょう。そして「グラタンに似てるけどお米が入ってる、これも好きいいいいい!!」となったのです。
そのグラタンとドリアを同時に食べられるなんて、迷わなくていいなんて! まさに私のために作られたかのようなメニュー!

「グラタンドリア」は、半分ずつグラタンゾーンとドリアゾーンに分かれており、グラタンゾーンはホワイト、ドリアゾーンはビーフソースだったと思います。




明治亭にはもうひとつ思い出があって、当時の好きな食べ物のひとつが「氷」でした。好きな食べ物:氷 って……と思いますが、レストランでお水に入っている氷をがりがりかじるのが好きだったのです。ある日氷をかじりながら、「このお店の氷はすごくおいしい」ということを母に力説していると、店員さんがそっと寄ってきて氷のお代わりをくれたのです。
私のような子供にこんなにサービスしてくれるなんてーー!! とお姫様のような気持ちになったのでした。
これがすごく嬉しかったので、その後他の食堂で 「前に明治亭で、氷おいしいって言うてたらお店の人がおかわりくれはったなー!!」 とでかい声で話していたところ、それを聞いたお店の人が半笑いで氷を大量に入れたコップをもってきてくれて、母が「催促してみたいですみません……」と恥ずかしそうにしていました。


明治亭はローカルファミリーレストランだったようですが、その後京都から撤退したようです。そのためか、お出かけ自体をしなくなったためか、6歳以降は明治亭に行った記憶がありません。今、滋賀に一軒同名のレストランがあるのを確認しております。あの明治亭と同じものなのか、一度行ってみたいと思います。グラタンドリアはもうないかなあ。