さてさて、千手滝から石段を上がり先へ行くと、少し道は険しくなります。
聳える岩は見事な柱状節理。

まず石段を上がったところで現れるのは、五瀑の三つめ、布曳滝です。
その名の通り一条の反物のように長く鋭く走る白い滝。

「しばらく歩くと、布曳瀧という見事な瀧があった。高さは三十粎はあろうか。一条の布を掛けたように落ちる瀧は、深い青緑の瀧壺にまっしぐらだった」
(車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』文春文庫、263頁)
……小説のせいでわれわれの会話はほぼ、「投身するならどの滝か」ということに終始していたので、はたから見たらやばい二人組だったかもしれません。(どう見ても死ににきたふうではない呑気さではあったが。)
布曳滝を遡ると「竜ヶ壺」。ここは小説ではこんなふうに描写されています。
「布曳瀧のすぐ上には、龍ヶ壺という深い淵があった。ここから流れ落ちる水が、すぐ下の布曳瀧へ一挙になだれ落ちているのである。投身するなら、ここだなと思うた。ここから布曳瀧の瀧壺へすべり落ちれば、間違いなく途中の岩に頭蓋骨は摧かれるだろう。岩走る速い水の流れだった。」(前掲書、p.263)

だんだん道は険しくなり、途中でナメちゃんが転びかけて健脚老人集団に笑われるなどの出来事もあり。ご老人の集団は一様にお元気でした。
小説では生島が下駄履きで来ていたので(映画では寺島しのぶが白いワンピース姿で)、下駄やワンピでも来れるところかとナメておりましたが、周囲の人は皆本格的な登山スタイルでした。
川の水は、さすが日本の名水といわれるだけあって、川の中の石や岩がはっきり見えるほど澄み切っています。ところどころ光が当たって泳ぐ魚の姿がはっきり見えるのは、極楽を思いやられるような光景であります。
ただこの日は、晴天続きで水位がかなり低かったらしく、普段はもっと美しい光景だとのこと。滝の音で会話が聞こえないほどの迫力なのであると聞きました。
それでも充分美しかったですけれど……。
こちらは縋藤滝。普段は流れているようですが、水が涸れちゃってます。

景色は、前を見ても後ろを見ても美しい緑、川には奇岩がゴロゴロあって見飽きません。
これは、ナメちゃん命名:メロンパン岩。

途中で、観光ボランティアだというおじいさんと出会い、「あんたらは琵琶滝まで。そこまで行ったら引き返しといで!」 と教えられたので、その言いつけに従い琵琶滝まで行くことにしました。
その時点でまだ2時過ぎでしたが、山の日没は急に暗くなるのでありましょう。
モアイの鼻が林立しているような雨降滝。これも雨の日はさぞ美しく水が流れてくるのでありましょう。

決死の便所。

そしてまがまがしい名称の骸骨滝。

「やっぱり心中する人が多くて、その白骨死体が浮いてて、そんな名前になったんかな?」 とナメちゃん。
いや、そんな名前つけへんから! てか心中する人そんないないから!
実際は、髑髏のように見える岩がその名の由来らしいです。
が、どれがその岩なのかはよく分からず。上の写真中央に移っている、苔生したでかい岩がそれかなーと思ったんですが(マッドマックスに出てくる何かみたいでかっこよかったし)、ネットで調べると、どうも落ち口にある岩(この写真では見づらい)のようですね。
さてさて景色はいよいよ壮大になり、なんだか凄い岩が層をなしています。
しばらく歩いてゆくと、赤目五瀑の四つめ、荷担滝が見えてくるのです。(次回へ続く)
