AKM48への旅(4)


赤目五瀑の四つめ、荷担滝。




多くの観光用ポスターで使われているのはこの滝の写真であるようです。
中央の岩を滝の流れが担っているように見えることから、この名がついたとの由。



二筋に分かれた水が深碧の滝壺に流れ込み、滝壺には少し枯葉が散って美しい。
感嘆し、いろんな角度からしばし見とれたり写真を撮ったり。

「七色岩、姉妹瀧、柿窪瀧、横ヶ淵、斜瀧、夫婦瀧、と清冽な瀧が次ぎ次ぎに続いていた。荷担瀧へ出た。これはひときわ見事な瀧だった。大きな岩を真ン中に挟んで、水が左右から二つに分かれて、流れ落ちていた。アヤちゃんは黙って瀧を見ていた」 (車谷長吉赤目四十八瀧心中未遂』 文春文庫、264頁)





水面に散る枯葉が金箔のようで美しく、さらに紅葉のシーズンともなれば、さぞ夢のような眺めであろうなあ、と思われました。





しばらく荷担滝を眺めたのち、先を急ぎます。

割れても末に、の夫婦滝。



見てのとおり、雛壇滝。



「さらに行くと、雛壇瀧へ出た。もう何も話すことはなかった。日が山蔭に沈んで行くに従って、上から下りて来る人の数もまばらになり、だんだん時が後ろから追うて来るようになった。」(前掲書、264-5頁)


ところどころ岩の上に、石が積まれていました。



琴滝。



このあたりになると、かなり急な山道になります。
そして到着!赤目五瀑の最後、琵琶滝。



上から見ると琵琶の形をしているらしいですが、水位が低いせいかよく分からずでした。
しかし、奥まったところにひっそりとした佇まい、秘境の趣ある、清々しい滝でした。
静かな滝の音を聞きながら、少しゆっくりしたのち、ボランティアおじいさんの忠告に従って、素直に引き返します。
この先にある「岩窟滝」を見られなかったのは残念でしたが、後で見返すと、小説の二人も琵琶滝で引き返していました。そう、ここでアヤちゃんが、「うち、もうええの。」と言い出すのです。


「琵琶瀧という瀧の前まで来た時は、恐らくはもう午後五時を過ぎていた。人の気配はまったくなくなった。私の先を行っていたアヤちゃんが、不意に立ち止まった。」 (前掲書、265頁)


ちなみにわれわれが琵琶滝に着いたのは3時過ぎ。ここまで来るのにゆるゆる歩いて2時間程度。
午後5時ともなれば夏とはいえ、あのボランティアおじいさんに「危ないで!はよ引き返し!」と怒られるのではないでしょうか。下駄履きとワンピースともなればなおさらであります。

ということでわれわれももと来た道を引き返します。
同じ道を返すのは億劫なようで、往路では気づかなかったいろいろな植物や設置物に気づけて面白かったです。


一定の間隔で設置されている緊急電話。錆びて開きにくいやつもあり。


やや無理のあるあいうえお作文


これは下駄履きではムリ。




帰り道はがんばって早歩きしたので、16:30頃下山。これを過ぎると日も暮れてくるので、このくらいがリミットなのでありましょう。
往路にはゆっくり見られなかったオオサンショウウオセンターで、巨大なオオサンショウウオ・くすくすちゃんに会ったりオオサンショウウオグッズをを見たりして、ちょうど17:00に退場。
この時間になると、入り口付近の土産物屋が軒並み閉まっていたのは無念でありました。


グッズの数々。手拭いが欲しい。


幼生ちゃん。見づらいけど、小さくてかわいいです。


さらば滝。



いうたら滝が延々続くだけの名所なんですが、滝がこんな良いものとは思っていなかったわれわれは、すっかり滝ファンになったのでした。
それにしてもスマホのカメラでは、壮大な風景を収めきれないのがもどかしいことであります。さてこれを文章で描写しようというのも大変な仕事であるだろうなあ、と思うたのでした。

さて、小説の痕を辿るのであればこの後言葉少なに近鉄電車に乗り込み、大和八木で飛び降りて相手をまくべきなのであるが、われわれは軟弱ものなので、この後旅館へ向かったのでありました。(次回、旅館篇へ続く)