猪苗代は日本のサンフランシスコだぜ

猪苗代湖畔での音楽フェス「オハラ☆ブレイク」へ行ってまいりました。

年に二回も東北に行くことになるとは思わなんだです。いいのかしら……と思いましたが、「オハラ☆ブレイク'24 愛でぬりつぶせ」という副タイトルを見て、ああああ~~となってしまい。ギリギリまで迷っていたのでいったんチケット売り切れで諦めたのでしたが、再販で無事チケット&駐車券を得ることができました。

以下、思い出を記します。

 

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ほんまなら前日泊して福島観光して朝ゆっくり出かけたいところでしたが、前日はお仕事であったので当日早朝の便でGO! 空港の福島行待合へ着くと、見覚えのあるTシャツを着た人々がたくさんいて、この時点で既にフェスの入場口みたいでした。

 

郵便飛行機さんでした!

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自分あるある:出演しない演者のシャツで行く

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飛行機の中でたまごサンドを食べ塚本邦雄を読みました。富士山が見えるというアナウンスがあり、みんな窓の外を見てました。たぶんこれが富士山。きれい!

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初めて福島を訪れたのは二年前。東北は私にとって「すごく遠いところ」であり、しかも母を伴って電車の旅であったので、決死のような覚悟で半日かけて会津へ着いたのでしたが、一時間足らずで福島に着いてしまいなんか吃驚しました。飛行機すごい!

福島空港はお花模様で溢れて可愛かったです。

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あれが阿多々羅山、なんぞと言いながらレンタカーでGO。天気は薄曇り。
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高速だとあっというまに猪苗代について驚きました。前回は磐越西線にゆっくりと揺られていったのでありましたが。

駐車場に車を停めシャトルバスへ。スタッフさんも少人数で回しておられて、今年は例外的に参加者が多いらしいが本来地元のこじんまりとしたフェスなのだろうなあと分かりました。今回、オハラブレイク行きたい!と思った理由として、セッションテーマのことがあったのは勿論ですが、どんなフェスなのかなと調べたところ公式サイトに「何かと余裕がなく忙しい日本において、気ままに生きた小原庄助さんの休息のような、究極のピースな空間創りを目指しています」と書かれていたことがあります。オハラブレイクのオハラって小原庄助だったんだ! なんかもうその由来だけで、行ってもいないのに既にオハラブレイク最高!!好きー!! となってしまったのでした……。

 

かわいいシャトルバスで会場へ。

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私はフェスといえばOTODAMA(清水音泉)しか知らんので、「あれ?シャトルバスやのに『田口のカラオケ』が無いやん!!」と思ってしまい、ペグレス(仮)に「ふつうは無い」と言われました。

途中でぎゅいん!と住宅街みたいな細い道に入ったのでびっくりしましたが、そこを抜けると湖畔の会場でした。

 

赤べこ&こぼしちゃんの看板!! 素敵。もうこの時点で最高です。

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入場チケット代わりのリストバンドを自分で巻きます。「愛でぬりつぶせ」が自分の手首にあるのはやっぱりちょっと照れてしまうな。

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この曲、ちょうど一番よくBirthday を聴いていた頃の曲で、当初は「愛でぬりつぶせって……そんなこと歌うんや……」と思ったものでしたが、先日久々にそのアルバムを聴くと、「リトル・リル」を経て「愛でぬりつぶせ」が始まるのがすごくよかったなア。

 

トイレ。カエルちゃんがいました。
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会場で、パブドックス(旧Theeパブドックス!)のみんなに会いました。みんなで酒を買い、乾杯写真を撮ってもらいました。(但し私のみソフトドリンクペットボトル)

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わ~~~よくあるあの構図や!と思いました。普段こういうのしないんでなんか照れますわ(ペットボトルだけど)。

うちおひとりは初対面、ふたりはたぶん五年ぶりくらい。五年ぶりやったけど永遠の少年然とした佇まいがぜんぜん変わってなくて感動!! 

 

みんなでわいわい話したり会場をめぐったり、「夕方のセッション何の曲やるやろ?」と予想し合ったり、シロくんと「『BABY PLEASE GO HOME』で終わるパターンが好きだ!!!!」ということを言い合ったりして(「BABY PLEASE GO HOME」終わり同好会)、愉しかったです。シロくんはこのTシャツを着てた! うわ~~~~

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お昼の部はアコースティック。出演者だけ発表されて正式なタイムテーブルは謎という形式もよかったです。お目当ての演者がいてそのために前に行く! みたいな形より、こういうゆるっといろいろ聴く……みたいなのがもう心地良いな~~。

今年はなんちうても人が多かったようで飲食ブースもトイレも長蛇の列であったので、お昼の部の大部分は何らかの列に並びながら聴いていたような気もしますが、それもまたよしでした。ちなみにこんなに列に並ぶのは、2011年のひたちなか以来です。

 

飯列に並びながら磐梯山と撮った写真。

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湖の向こうに磐梯山が聳える、その景色だけでもうかなり満足だった!  てっぺんにかかっていた雲は、この後だんだん晴れていったのでした。

 

アコースティックパートでは、トップバッターのサニーデイサービスが知ってる曲で始めて、あら良いね、と思っていたら、何曲目かで「世界の終わり」をやって、そのカヴァーがめちゃかっこよかったのでした。この曲が勿体ぶられず開始15分くらいで演奏されたのがすげーよかった!! その後も、各演者一曲ずつカヴァーを演るという形で、列に並んだり丘に登ったりしながら見たんでしたが、シャロン、GIRL FRIEND、キラービーチ……あーチバの作った曲ぜんぶ好きやな、と思い出したのでした。

 

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音楽だけでなく、会場内には雑貨や本や服のお店やアート展示もあって、林の中をみんなで或いはひとりでお散歩しました。

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なんか気に入った作品。ヘイローさんという地元のアーティストさんの可愛いお化け!

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清志郎の昆虫画Tシャツがよかった! こんなの描いてたんだ。素敵や。

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ビール片手に微笑むあの方の肖像が描かれていました。すごい! この前に皆が集っていてちょっと「毛沢東みたいだな」なんて思ってしまったり……。

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肖像の周りに皆が思い思いに好きな詞を書いていました。「メッセージ」とかでなくて「好きな詞」ってとこがチバらしくてええなあ。私は書かなかったんですが、書くなら何がよかったかな~~(じめるうなだれ?)


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これはステージ横の「ロックの図書館」。コンテナには奈良美智

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内部にはレコードや諸々が展示されていました。

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この写真いいよね。

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このゾーンうちの押し入れみたいでちょっと笑った。

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アコースティック終盤は、TOSHI-LOWと民生。TOSHI-LOWは「満月の夕」のカヴァーがよかったな。MCでは、福島の原発作業員の友達の話も。能登地震で初期に「現地に来るな」説が広まってしまったことなどにも触れていました。愉快な話としては、全国のロックバー的なところには必ず矢沢(コスプレ)かチバ(コスプレ)がいるのでいずれ全国のユウスケ選手権をしたい、という話と、チバの被害者の会をやろう、ロフトプラスワンとかで、という話。どちらもぜひやってほしい!

その後トイレに行ったところ一時間並ぶ羽目になったので、民生はトイレ列に連なりながら聴きました……。

 

トイレに並んでいるときに、ちょうど湖に夕陽が沈んでゆくのが見えました。

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この景色を見ながら、トイレ列の後ろに並んでた方とちょっとお喋りしました。引っ込み思案なものであんまり知らない方に話しかけたりできないんですが、地元の方のようであったので声をかけてみましたらば、福島の気候の話とか、猪苗代湖はすごく深いんだとか教えてもらって、そうして知らない土地で知らない人とわずかな間お話できたのもよき思い出であります。

 

長蛇のトイレ(助かり膀胱)から戻ってくると、湖はすっかり朱色でした。雨予報のはずであったのに、雨は結局降らず見事な夕焼け。

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夕の部のセッション待ち。人がいっぱいだった!f:id:kamemochi:20241006221042j:image

キュウさん、ウエノ・ハルキ(交代)、古市コータローのバンドに、ゲストヴォーカルがかわるがわる参加して歌う形。この人がこれを歌うのか!なるほど!とか、そう来たか!とか、そういうのもいちいち愉しかったし、誰がどの曲を歌ってどうだった!!どれがよかった! みたいなレポを書いてもいいのですが、きっといろんな人がいろんなところで書いていると思うので省略します。ただただ、あ~~どの曲も好きだ~~と思い、次々かっこええやつが連打されて圧倒され続ける幸福感を思い出しました。セッション始まりはゴッドファーザー。私はリアルタイムでは生ミッシェル観ていないのです。まさに当時ヘヴィーに観ていた人であれば、更にたまらない思いであったでしょう。一曲目、まさか2024年にCISCO---!!!」になるとは思っていませんでした。これでもうワーーとなっちゃった。猪苗代は日本のサンフランシスコだぜ! かと思えば、その後の「ドロップ」はラストヘヴン一曲目だよね、自分はあの映画を映画館で観たんですが、そのときの、だんだん暮れていくような明けていくような青が目の裏に広がって、ちょうど陽を残しつつ暮れてゆく湖上の空がまさに、「神の手はにじむピンク」。途中で Sixteen Candles も流れて、なるほど、ミッシェルに思い入れのある人もBirthdayに思い入れのある人もわああとなる構成。周囲にはやっぱり泣いている人も。

 

それにしても楽曲の同一性って不思議。作った人がいなくなっても作品は残るのだなあ、と思う一方で、でもその人の歌声その人の演奏で聴けることはもうないのかと思うと大変な喪失感もあり、それは作者やパフォーマーと楽曲が強く結びついたジャンル特有のことではあるのかもしれませんが、何か大きなもの(ここではいわゆる「ロック」とか呼ばれるもの?)の演繹的顕現が個々の楽曲やパフォーマーであるにすぎないようにも思えるし、一方で、その楽曲はその人たちのものでしかありえないようにも感じるし。ヒロトが歌った「ローリン」は、「道はひとつでまだ続くから」のところを、ちょっとタメて強調して歌っていて、ヒロトならそう言うよな、と思い同時に「続いてくんだろう」と歌った歌も思い出しました。皆がメンバーの名を呼んだり不在の人の名を呼んだりする中、感に耐えぬように「ロックンロール!!」と叫んでいた客がいて、それは、言い得て妙(叫び得て妙)であるな、と納得しました。

 

これは最近の個人的感慨なので以下はべつに誰にも伝わらなくていいのですが、最近、自分の中で、強い印象をもつ幾人かの過去の人物が重なって誰が誰なのか分からなくなったり過去のことなのか今のことなのか分からなくなったりする、というふしぎの体験が続いていました。単なる老化的なアレかもしれませんが、ちょっとこの夏自分はずっと変だったのでくすぶり続けた変の再燃的な感じでもあり、まあこれって(精神分析用語でいうところの)「転移」みたいなもんかな……と思っていたのでした。でも、「転移」って一般的には過去の原版を反復することであるけれど、そうではなくて、先に、未来に、到来すべき宇宙的完全体みたいなものがあって、私が体験している個々の個々はむしろその断片的顕現なのかもしれないわ……っていうようなことを、すっかり暮れた湖上の空を眺めつつ思うたのでした。

 

とはいえそれもあんまりベタな俗流イデア論みたいなやつかもしれず、今はまだ、ただ、やっぱ早すぎたよ、此処にいないの淋しいよ、でいいのかもしれないね。

最後は今回のサブタイトルにもなっている「愛でぬりつぶせ」で、ゲストヴォーカルが全員ステージ上に現れて歌ったり踊ったりして、そのハートフルさに、「目玉をえぐり出してくれと 頼んでみようかな」って歌から始まるアルバムでデビューした人が、こんな場所に至ってしまうのであるなあ、となんだかふしぎな気がしました。ステージ横には、その歌詞に合わせてかクジラの絵が描かれていました。セッション終了後、ステージの向こうに花火が打ち上げられ、それはそれは綺麗だったのでした。かつて「意識がつらい」と言った人よ、とふと思ったのでした。

 

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ハサミムシに囲まれながらシート片付けてバス列に並びます。とにかく列がすごいイベントでしたが、例年はこんなに人が来ないのだそうで、スタッフさんもきっと足りていないなか大変だったことでしょう。列並びも最早良き思い出で、並んだ末のバス乗り場でも「もうバスすら美しく見える……」という気持ちになっていました。ありがとう、オハラブレイク、ありがとう、猪苗代湖

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街に出て、パブドックスたちとデニーズでごはん食べました。この、「深夜のファミレスで初対面の人含むみんなでわいわい」なんてのもすごく久しぶりのことで、なんだかめっちゃ愉しかった!! パブドックスくんたちも「一緒に観られてよかった」と何度も言ってくれたし、なんか嬉しいなあ。なんかテンション上がって思わずでかいパフェを頼んでしまったのでしたが、これは完全に余計でした、カロリー的に(美味かったが)。
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