犬、ヒトに会う

今日はまめ子の命日、7年目です。早いものであります。毎年、実家の年賀状の作成をわたくしが担当しており、図中にまめ子を登場させているのですが、いつまで登場させ続けるか……悩みどころです。次の戌年まで続けよかな……。

 

さて、今日は「人に会ったときのまめ子」の思い出を書こうと思います。

 

思えば、まめ子を飼っていたときは、いろんな友人知人がまめ子に会いにきてくれました。極度に愛想のない犬であったにもかかわらず、有難いことです。

私のまめ子自慢を聴かされ続けていた研究室の人々が見にきてくれたこともありました。ネットで知り合った友人が会ってくれたこともありましたし、このブログを読んでくださっていた方がはるばる来られたこともありました。近所の友人や当時親しくしていた人たちは頻繁に会いに来てくれて、最後の最後まで見舞いにきてくれた友人もいて、飼い主に似ず人望のある犬だったと思います。

 

 

しかし私は、そうしてまめ子を人々に会わせるたび、少し残念な気持ちでおりました。

なぜなら、まめ子は、よく知らない人に会う際、「過剰に犬ぶる」からです。

まめ子の魅力は、犬なのにどこか人間臭いところだったと思います。家でくつろいでいるときは、人間のようなくつろぎ方でくつろぎ、人間のような表情を見せ、時には人間の言語に近いものを喋っていました。しかし、知らない人に会うとまめ子は、なぜかその様子を隠してお澄まししてしまうのです。その代わりにどうするかというと、「やたらそこらへんの匂いを嗅ぐ・えさを食べることに集中する・尿を大量に出す」など、普段あまり見せない犬っぽい行動に勤しみ始めるのです。そして、普段はのんびりおっとりしているのに、お客さんの前ではやたらせかせかと働き始める(犬の仕事をし始める)のです。

 

 

たとえばこれは、あねたちが来てくれたときの写真。えさに集中する素振りを見せるまめ子です。

 

お客さんを前にしたまめ子は急に、「カッカッカッ」と激しくえさを食べ始めたのでした。普段えさを食べる時間ではなかったにもかかわらずです。お客さんのことが気になっているはずなのに、敢えてそちらを一切顧みずに、えさを食べることに熱中しています。

その後、われわれは散歩に出かけました。普段なら、ゆったりと歩きときには道端で休み始めることもあるまめ子ですが、このときはまるで普通の犬のようにアクティヴに、先へ先へ歩くのでした。

 

 

 

こちらは名古屋からmnmちゃんが来てくれたときの写真です。mnmちゃんは、ウィルコ・ジョンソンのライブの感想を通じてネットで知り合った女性です――ウィルコも先日ついに訃報を聞くことになりましたね――。

彼女も犬好きということで、京都に来た際にまめ子に会ってくれたのですが、この写真でも、リードをもつmnmちゃんを引っぱり、地面の匂いを嗅ぐことに執着しています。

 

 

もちろん犬なので、普段からあちこちの匂いを嗅ぐことはありましたが、なんていうか……普段と違うのですよ。自然体の嗅ぎではなく、お客さんを認識したうえで敢えて「今匂い嗅ぐのんに忙しいんですわ、あて犬ですさかい、人間さんと違うていろいろ仕事があるんですわ」とアピールしているかのようなのです。

mnmちゃんにもその微妙な機微が伝わったのか、「まめって中に人が入ってるみたい」とのお言葉をいただきました。

 

 

これは、また別の日にあねたちが来てくれたときに、あねが撮ってくれた写真です。

 

これも「ベンチの匂いを嗅ぎまくる」という犬らしい行動に勤しんでいる場面です。あねたちはまめ子を撫でたり写真を撮ったりと構ってくれたのですが、まめ子は頑なに顔をそちらに向けようとせず、散歩の間ずっと忙しそうにしていました。

最終的にはいつものようにベンチに腰を下ろしたものの、ずっと背中を向けたままでした。

 

 

しかし思えばこういう行動は飼い主も覚えがあるところです。

私も、子どもの頃は人見知りでありました。馴れない親戚がたくさんやってきたり親の知り合いに会わされたりすると、どういう態度をとってよいか分からず、いつもよりはしゃいでみせたり遊びに熱中するふりをしたりと、過剰に「子どもらしい」行動をとることがよくありました。子どもの頃、と書きましたが、かなり大人になっても人見知りだったかもしれません(今でも)。そういえば中学や高校の休み時間も、手持ち無沙汰と緊張(友達と遊ぶのが苦手だったため)をごまかすため、べつにしたくもない自習で忙しいふりをしたりしてましたね……まめ子もそんな感じであったのではないかと思います。

 

これは、当ブログを読んでくださっていた「まめ子ファン」さんがはるばる隣県から来てくださったときの写真です。(なお当時の日記はこちら。)

 

この背後に、ファンさんと先輩とその犬たちがいるのですが、まめ子はそちらを見ず、草を味わっております。「やたら草を食べる」というのも、お客さんが来たときの定番行動のひとつでした。

このときも最後は背中向け状態で固まってしまったまめ子……ファンさんと先輩は流石犬愛にあふれた方々、そんなまめ子をずっと優しくなでつづけてくださったのでした。

 

 

その他、まめ子に会って下さった人の言葉で印象に残っているのは、Iさんに言われた「タオイスト」という形容です。

まめ子の、何事にも関心のなさそうな飄々とした様子を、そう表現してくださったのでした。たしかにその形容はまめ子にぴったり! と思うと同時に、一方で、実は人間を意識しすぎてああなっていたのでは……という気がしなくもありません。