まめの十戒
犬を飼う方なら、「犬の十戒」 は一度は目にされたことがあるかと思います。
最近はネットでもよく見かけますし、犬を飼い始めるときに、ペットショップや里親さんから渡される、という話もしばしば聞きます。
いくつか訳のヴァージョンがあるようですが、以下、文藝春秋のサイトから引用させていただきます。
1. 私と気長につきあってください。
2. 私を信じてください。それだけで私は幸せです。
3. 私にも心があることを忘れないでください。
4. 言うことをきかないときは理由があります。
5. 私にたくさん話しかけてください。人のことばは話せないけど、わかっています。
6. 私をたたかないで。本気になったら私のほうが強いことを忘れないで。
7. 私が年を取っても、仲良くしてください。
8. 私は十年くらいしか生きられません。だからできるだけ私と一緒にいてください。
9. あなたには学校もあるし友だちもいます。でも私にはあなたしかいません。
10. 私が死ぬとき、お願いです、そばにいてください。どうか覚えていてください、私がずっとあなたを愛していたことを。
というように、飼い犬から飼い主へのことばという形を借りて、犬を飼うにあたって必要な心構えが連ねられています。 SNSなどでもこれが話題になると必ず、「泣いた、感動した」などのコメントがついています。
たしかに、軽いノリで飼い始めておいて虐待したり捨てたりする飼い主が後をたたぬらしいことを考えれば、これらは犬を飼ううえで重要な心構えであるとはおもいます。
しかし! いつもこれを見るたび、なにか違和感を感じるのです。
「まめ子がこんなふうに考えているとはとても思えない!!」
と。
私はまめ子以外の犬を飼ったことがないので、犬一般の性質がよく分からないのですが、ふつうの犬はこんな感じなのでしょうか?
「犬の十戒」 の犬は、いつも飼い主さんだけを見つめ、見上げ、お慕い申し上げている口ぶりでありますが、まめ子様がこんなふうにお慕いくださっているとはとても思えません。
そこで、「犬の十戒」をもとに、「まめ子だったらこんなふうに言うんじゃないかな」 という推測に基づいた、「まめの十戒」 を作ってみました。
(そもそも犬語を人間語に訳せるのか、犬に「愛」とか「死」とかいう概念があるのか――等々は言えばきりのないことでありますが。)
【まめの十戒】
1. おまえらに気長につきあってやってる。
2. まあ信じといたらええがな。その方がこっちも脱走しやすい。
3. おまえらにも心があることを覚えておいてやってもいい。
4. 言うことをきかないときは高級えさを与えてください。
5. 「かわいい」「かわいい」とか、同じことばかり話しかけられるの飽きた。
6. それでたたいてるつもりか? その程度か?
7. 私は年を取ったので、そっとしておいてください。
8. 私は十年……二十年くらいしか生きられません。だからできるだけ、さんぽとごはんのとき以外は放っておいてください。
9. おまえらにはしょうもない学校とか仕事とかしかないし、友だちもどうせあんまりいませんよね。でも私には、外でにおいを嗅いだり仲間に吠えたり、いろいろ大事な用事があります。だから仕事を休んででも散歩に行け。
10. おまえらが先に死んだら、もっといい家で飼われたい。