世界でいちばん綺麗な尿

今日は、世界でいちばん綺麗な尿の思い出を書きます。


以前書いたとおり、まめ子は迷い犬として我が家にやってきたという前歴を持つ犬ですが、その前はどこかで飼われていたとみえて、うちに来た頃はもう、トイレット・トレーニングは(済)だったのです。
家の中では絶対に排泄しませんし、外でも、いくつかの決まった場所でしかしません。
親戚宅の犬はよく、家人が帰宅したりすると嬉しさの余り床に失禁していましたが(いわゆる「うれしょん」と呼ばれる現象)、まめ子はそんなこともありません。
(ていうか、そもそも、家人が帰宅してもよろこばへんし!)

そして、まめ子はきれい好きらしく、排尿するときは尿が足につかないよう、巧みに足をずらすなどポジション取りに苦心し、排尿後はその場からさっと飛び退きます。
以下は、そんなまめ子のたった一度の「うっかり尿」話です。



さて話は変わりますが、まめ子はひなたぼっこが好きなようです。
我が家に来た頃は始終緊張してびくびくし、絶対に腹を見せようとしなかったまめ子ですが、気候のよい日にひなたに連れ出してみると、ぺたっと座ってリラックスし、やがてごろんと腹を見せるようになったので、ぼっこ好きなのだということが分かりました。(まったく、あの有名な歌のせいで、犬というものは雪やこんこと降る寒い日が好きなのだとばかり思い込んでおったよ!)


で、数年前、まめ子が来て数ヶ月目の或る秋の日、公園までおさんぽに連れてやったのです。
ちょうど今くらいの季節、秋だが温暖な、よいおてんきの日でした。
公園の真ん中にはおおきなくすのきがそびえていて、その周りには赤や黄の落ち葉が絨毯を為しており、園内をくるっと一周した後、まめ子はひだまりにちょんもり座り込みました。


わたしも隣に腰を下ろし、ぼっこタイムです。
動くと汗ばむほどの気候、眩しい日差しの中、飼い主もぽやっとし始め、まめ子はといえばぺたっと腹這い態勢になってうとうとねむねむしています。

そのときでした。
なにやらコポコポと小川のせせらぎのような音がするのでそちらに目をやると、まめ子の腹這いになった腹の下から、泉のように水が湧き出しているではありませんか。
それも、黄金の泉です。

「ま、まめ子! ……おしっこが!!」

そう、まめ子はきもちよさのあまり、腹這いのままおねしょしてたのでした。


普段なら自分の尿跡からそそくさと立ち退くくせに、今は動ずる気配もなく、しあわせそうに目を細めたまま未だコポコポさせています。
揺り起こそうとしたわたしも、そのきもちよさそうな様子に起こす気をなくし、まめ子のおなかの下から湧き出る泉を眺めるばかりでありました。



大きな樹と色とりどりの落ち葉に囲まれ、まめ子のおしっこは、ふりそそぐ秋の陽に透きとほる金色の糸のごとく、きらきら輝いておりました。
あたたかな空気の中、世界がまめ子の尿を祝福していたのでした!
それ以来、まめ子も大人になったのか「うっかり尿」をしていないので、あれは、わたしがこれまでの人生で見た中でいちばん美しい尿であります。





2005年秋当時のおすがた