京都に住んでいるときは、「今日は四条通は通れないな……でも花見小路は空くな!」というくらいの行事でしたが、むしろ京都を出てから7月になるとソワソワし始め、17日、24日には無駄にはよ起きてKBS京都の山鉾巡行中継を正座待機する始末。まさに故郷は遠きにありて思ふもの、というか、京都とはちょっとだけ遠きにありて思ふもの、って感じです。
今年は印象的なシーンが多々あったので記しておきます。
・前祭巡行
普段TVをつけることはほぼ無いのですが、仕事場をTV部屋に移して万全の待機……始まりました!!
アナウンサーの方(お名前分からず)、おなじみ八木先生に、今年のゲストは東ちづるさん。東ちづるさんのコメントはとてもよかったです。毎年の「祇園祭クリーンキャンペーン」も「山と鉾の違いコーナー」も愛おしい……。
この日は曇り気味。本当なら青空に山鉾が映えるのがきれいなのだけれど、しかし晴れだと気温がえらいことになるだろうからよかったともいえます。曇りでも暑そうでしたが。
くじとらず(※京都関連で最も好きな用語かもしれない)の長刀鉾が「エヴァ発進!」のごとく動き始め(小さな子の「がんばれ~」って声が拾われてて可愛かった)、注連縄切りのカメラワークが格好良く、国際色豊かな懸装品(函谷鉾の前掛けが今年はモン・サン・ミッシェル柄でかっこよかった!!)にホワワ~~となります。長刀鉾が動き始めて45分かけて河原町まで来たのも、百年とか二百年とかいう単位の話が頻出するのも、ああ、こういう時間軸に触れるのひさしぶりやな……とホッとします。そうした伝統が、京都にいるときにはとにかく息苦しく感じていた「家」や「町内」によって担われていることに両価的な思いを感じるのも毎年のことですが、しかしそうした己の両価性も、京都を離れたことでいくぶん冷静に検分できるようになり、やはり「祇園祭はちょっと遠きにありて思ふもの」やなあ、と思うのでした。
そして今年の前祭の事件は「鶏鉾車輪破損」事件でしょう。こんなん初めて見ました。ツイッタを見ると「不吉」「平和の象徴である鶏鉾が……」みたいな呟きがたくさんありましたが、しかし、これまでも数多あったであろうトラブルに対処してきた知恵とか機転とかも祭の一部やと思いますし、京都の人は意外にそういうとこリアリストやと思うのでそんな不吉がらんでええんとちゃうかな、などと思いました。八木先生も「そもそも一回全部焼けてるしこんなことくらいでへこたれませんよ」とか言うてはりました。(それに平和の象徴とかいうなら既に世界は平和ではないし……平和は人間ががんばろや!)
鶏鉾の人たちは無念だったかもですが、この事故によって、いったん四条通りの端に寄せられた鶏鉾の隣を後続の山鉾が通ることとなり、「鶏鉾と月鉾が並ぶ」という超レアな光景を見ることができました! 屋根方の人たちが互いの鉾を押し合って協力しながら無事すれ違い成功した光景に、思わず「うおお」と胸熱になり、沿道から拍手が起きたのも感動的でした。
テレビ画面を撮りまくる私…
この後、KBS京都が中継延長してくれたのもめちゃ嬉しかったです。KBS京都、有難う有難う!!
・後祭巡行
人が多いのはなんというても前祭でしょうが、私は、それよりひっそりとした後祭のほうが好きかもしれません。前祭も、みんな大好き蟷螂山など魅惑的な山鉾がたくさんですが、後祭は、最推しである鯉山、祇園祭ファンになったきっかけの黒主山、蛤御門の変(許すまじ)ぶりに最近復活した鷹山、など推し山がたくさん。
しかし! 今年は鯉山が雨対策のため黒覆がかけられ、ご神体の鯉が見られなかった! 寂しい!! 鯉~~~私の鯉よ~~!! しかしこれはこれでレアな姿……。中継の間は雨は降らず、ずっと「鯉~~見たいよ~~」と思っていたのですが、この後豪雨に見舞われたらしいのでこの姿は正解だったのでしょう。
そうそう、祇園祭って、何年も何年も同じことをやっているようでいてその年のことはその年限りであるところも面白いなあと思います。今年は、大船鉾に新調された大きな車輪がついてて超かっこよかったのですが、白木のままの姿を見られるのはおそらく今年限りのこと、とのことでした。そっか~~。
ちなみにこの車輪、作った大工さんも巡行にいらしてて「とんでもないものを作ってしまった」と言うてはったんが、ロボットアニメの博士キャラみたいでかっこよかったです。「百年後も使われれば」と仰ってたのもよかった。
京都にいた頃は、山鉾巡行が終わると、信号戻しカーがやってきて一瞬のうちに街は何事もなかったかのような表情を取り戻し、でもどこかに熱を抱えているような、そんな河原町通りや四条通りをプラプラと歩くんが好きでした。中継ではそれは叶わないですが、KBSが最後に、青々とした東山や鴨川の様子を写してくれたのが有難いことでした。
KBS京都有難う! 次は送り火中継だなあ。(どうか「消えた送り火コーナー」を復活させてほしいです。)
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ところで、私が初めて山鉾巡行をちゃんと見たのは大人になってからで、2003年のことでした。
それまで祇園祭って「一年に一回人がいっぱい来て通行止めになるやつ」くらいの認識しかなく、「宵山では山鉾のご神体や懸装品を観ることができる」ということすらもよく知らんかったのでした。のちに妹に訊いたところ、妹も「祇園祭? 浴衣着て夜店を歩く祭やろ」と言うていたので、京都の若者の一定数はそれくらいの認識である可能性があります。
しかし、大人になって初めて間近で見た山鉾巡行で、黒主山を見て「え~~こんな可愛いものがあるんや!」と思い、蟷螂山を見て「ウワー! カマキリや!おもろ~!」とときめき、そこから祇園祭ファンになったんでした。
この頃は今ほど観光客も多くなくて、仕事かなんかのついでにぷらっと四条行って巡行を見てきたんでした。沿道のお店のおじさんが仕事の合間に写真撮ってて、ケータイにジャラジャラ可愛いストラップをつけていた……というどうでもええことを覚えています。その日の写真を載せておきます。
これが黒主山
蟷螂山
便乗
まつりのあと
*これまでの当ブログの祇園祭記事
・GIONfestival - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp) (20080717)
・Gionfestival その2 - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp) (20080719)
・宵山、地味な山めぐり - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp) (20120721)
・祇園祭 - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp) (20140720)
・山鉾パイロン - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp)(20160717)
・祇園祭とパイロンたち - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp) (20160722)
・祇園祭のコンビニのパイロン - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp)(20170720)
・祇園祭パイロン - 京都ぬるぬるブログ2.0 (hatenadiary.jp)(20190722)
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山鉾巡行は終りましたが、祇園祭は7月いっぱい続くのです。京都市内の者でも関係者や研究者でなければ祇園祭全行程を把握している人は少ないはず。私もほとんど知らず。今後まだまだゆっくり知っていきたいものです。
そして、今日は、大阪で、天神祭の花火を遠くから少しだけ見ることができました。異土の祭もまた良きです。