まめ子15周年/まめ子の「ぐむ」

昨日は、まめ子を拾ってから15年目の記念日でした。もう15年経つのか、というような、まだ15年前なのか、というような気持ちです。まめ子の形は現世からはなくなっても、まめ子は、「ああ、まめ子だなあ」としか感じようがありません。永遠に、ちょっと間抜けで、心優しい一方ちょっと偉そうで、ちょっと情けない犬でありつづけています。

 

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(2009年夏、周山へおでかけ写真より)

 

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とはいえ、5年も経ちますとやはり、まめ子を思い出そうとするとき、まめ子の個性が捨象され抽象的な「犬」として思い出してしまっているときがあります。可愛く天使のような「犬」という概念の一部としてまめ子をイメージしていることに気づき、「いや、違う違う、奴はもうちょっとこう、野性の匂いをまとい生々しい生き物だったはず……」とイメージを修正するなどします。

今日はそんな、まめ子の野性味を示す一面であった「ぐむ」のことを書いておきます。「ぐむ」とは我が家における犬用語の一つです。

 

 

まめ子は、我が家に彷徨いやってきたとき、出血していました。まめ子は定期的に生理があったのでした。ちょうどそのとき私も月経期間であり、そんなこともその初対面の犬になんとなく心を寄せる一因であったと思います。

生理があったということは、まめ子は去勢手術を受けていませんでした。今は、ペットに避妊手術を受けさせるのが主流であるのかもしれませんが、その後もまめ子に手術はさせないままでした。犬のいわゆる「生理」は、人間のそれとは違い、発情期の前期に当たるのだそうです。その発情期に見られる行動を、我が家では「ぐむ」あるいは「ぐむり」と呼んでいました。その際まめ子が、「ぐむ、ぐむ」というような、普段出さない声を出したからです。

 

最初にぐむり行動に接したときは、犬知識が皆無であったので、何事か分かりませんでした。我が家に来て3か月頃だったでしょうか。普段まったく人間に進んで近寄ろうとしないまめ子が、急に人間の足に擦り寄り「ぐむ、ぐむ」と言いながらしがみついてきたので。更に普段しない甘噛みをしながら爪を立てられ(小型犬ならなんてことなかったのでしょうが)けっこう痛い! 慌てて引きはがすと、淋しげな眼でこちらを追っており、それも普段のまめ子のしない眼差しでした。

 

それまでクールな犬だとばかり思っていた我々は、初めて見る野性的な姿に少しショックを受けたのでしたが、それはそういうもので周期的なものだと分かってからは、ぐむりを受容し付き合えるようになりました。といって、脚は傷だらけになるし、特に背丈のない私はまめ子を上手く引き剥がせないので大変は大変でした。引き剥がしたら引き剥がしたで切ない声で鳴かれるので、耐え切れず脚を貸したりもしていました。おさんぽ中に外で突然ぐむりが始まると手に負えず困り果てたりもしました。突然うるんだ目でこちらを見上げ、普段舐めない舐め方でペロ…ペロ…と足を舐めてくるのがぐむり開始の合図でした。

 

まめ子はときどき、出血中以外にもぐむり始めるときがありました。たとえば、おさんぽ中にひなたぼっこでしばらくぽかぽかしたのちに歩き出すと、突然ぐむり始める、など(ええ按配に身体が暖かくなったしなんとなく、みたいな、人間の発情と同じメカニズムなのでしょうか??)。そうなると、最大20kgの動物が歯と爪を立てながら足に絡みついてくるわけで、たいそう難儀しながら家まで帰らねばならないのでした。まめ子のリードを持ちながらまめ子から逃げる、という矛盾した芸当をしなければいけなくなったり、道行く人に笑われたり、転んでしまったり(私が)、どうしようもなくなって暴れるまめ子を抱えて帰ったり……。

 

今日、「まめ子はいつまでぐむってたんやろう?」とふと思い出し、昔の記録を辿ってみましたらば、死の直前までぐむっていたことが分かりました。まめ子が逝ったのは11/29。その2、3週間前の日記に――この頃既にだいぶ元気がなかった頃だと思いますが――、「ぼっこ(※ひなたぼっこの意)から引き返そうとすると、物足りなかったのかぽかぽかしたのかなんとぐむり始めた」「ぼっこをし、あたたかくてむにゃむにゃしているところを頭を撫でると目を細めた。落ち葉を頭に乗せて写真を撮った。帰ろうとするとまたぐむり」という記述がありました。大変でしたが最後までおまめ様にぐむられていたのは、幸せな飼い主だったといえるのかもしれません。そのときの散歩の写真をupしておきます。(この状態から立ち上がった後ぐむり始めたわけです。)

 

 

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