犬カフェ初潜入ルポ、或いは遊郭の中の愛

以前、すてきなお犬さんのいるカフェを紹介しましたが、その後、「犬カフェ」なるものが隣府にいくつかあることを知り、或る日、友人と行ってみることになりました。
ここでいう「犬カフェ」とは、犬を連れていけるカフェ、というのでなく(連れていけるところもあるが)、あらかじめお店に犬が何匹もいて、その犬々を愛でながらお茶できるカフェのことです。店外デートならぬ店外さんぽをできる店もあり、さしづめ犬キャバといえるかもしれません。

しかし、しかし。
われわれの犬カフェ初潜入は、残念さん(@アマですわ)な結果に終わりました。
遅い時間に行ったためでしょうか ――しかしまだ営業時間内だったのですが―― 犬は一匹しかおらず、ほどなくその一匹も連れ去られてしまったのです。店員さんに、「あのー、犬は…」とたずねてみると、店員さんは、「ああ、今、みんな帰りましたよ(笑顔)」。
これでは犬カフェでなく犬いないカフェ、すなわちふつうのカフェです! メイドのいないメイドカフェです! キャバクラに来たら「女の子はみんな帰りましたよ」と言われたようなものです!……と思いつつもそんなことを言える由もなく、われわれは、犬のいない犬カフェで、微妙に高い価格設定の、べつに飲みたくもない珈琲を、寒々と啜ったのでした。

そんなさみしい犬カフェデビュウを飾ったわたくしでしたが、先日、所用ありて隣府へゆく機会があり、その際、べつの犬カフェでリヴェンジしてみる気になりました。
用事でぐったりしていたこともあり、犬々に癒されたい……という気持ちもあったのです。
まるで、仕事で疲れたから風俗へ癒されにゆくヲヤジのような己の発想に、やや後ろ暗いものを感じつつも、ネットで知った小奇麗なビルの奥にある犬カフェを訪いました。


その犬カフェは、飲み物はオーダーしてもしなくてもよく、所定の料金を払えば何時間でも滞在できるというシステムのカフェです(但し混雑時は時間制限あり)。店員さんから諸々の注意を受け、入口のドアをあけると、十匹以上大小のいぬいぬがてとてとてと…と駆け寄ってきました。わあぁぁぁ………昂奮しすぎて手に持っていたホットカフェオレを、思いっきり洋服にこぼして火傷。(犬にかからなくてよかった。)


店内を見渡すと、大型犬、こまごまふわふわした犬々、柴、ビーグル、ミニチュアブルテリア、などさまざまな犬々が思い思いにてとてとしています。
店内にいる犬は、みな雌犬とのことで、中には経産犬と思われるおっぱいの大きい犬もいます。オオウ、not only 犬カフェ、but also 乳犬カフェ! 当たりだ!と、まるで、《この店は巨乳の子が多いねェ、当たりだ!》とか言うてるヲヤジのような自分に嫌悪感を感じつつ歓喜、のアンビバレンスです。




いぬうようよ楽園



お客さんは他に何人かいて、それぞれ膝にいぬをのせ、うっとりされています。いぬたちは、膝にのったりぺろぺろしたりしつつも、必要以上に媚びない感じがまめ子ぽくて好感です。
最初はどうすればよいかわからず、にやにやと犬々を眺めていたわたしでしたが、しばらく座っていると、ふわふわした犬が、ぴょこんとお膝に飛び乗ってくれました。なんと! 小さくて猫のようで、まめ子と同類とは思えません。なでなでしてるとすぐに寝てしまいました。その子が目を覚まし膝から降りると、またべつのふわ犬が乗っかってきます。膝のうえはほかほかです。





すやすやしています



三年一緒にいるまめ子ですら、こんなふうに膝に乗ってはくれないというに……感動です。
しかし、ああこやつらも接客犬なのだなあ…、と思うと、風俗に癒されにきたはいいが其処で働く女性も自分と同じ労働者であることに気づいてしまったヲヤジのような、複雑なきぶんになります。
ああ、ああ、金銭を介する愛は、いつも複雑です。


すすんで膝にのってくれるのは小さなふわ犬たちが主で、大きな犬たちは概してマイペースです。
しかし、冷淡だと思っていたビーグルは、寝ているところをなでなでするとごろんしてくれました。この時点でもう感無量。




おっぱいが…



わたしにだけお腹を見せてくれたのかと思ったら、この後、他の人の足元でもごろんごろんしており、ジェラシーを感じました。
そして柴。




フリーダム









この柴は、構いたかったのですが敷居が高く、あまりなでさせてくれませんでした。でも、カメラが気になるようで、カメラを構えるとこちらを向いてくれました。





さていぬを見た目で判断しては不可ないと思いつつ、どうしても好みのルックスというのはあるもので、そしてわたくしの好みは、顔つぶれてる系&ぶたっぽい体型 です。そうであるので、お店に入った瞬間から、視線はブルテリアロックオンでありました。




こんなお顔です。
かわいい………




ですがこのブルテリア、この日はなぜか、男性客にばかり懐いて、まったくこちらへ来てくれません。近くまで来ても素通り、こちらからなでなでしに行ってもつれないご様子。わたくしときたら、他の女の子の接待を受けながらもお気に入りの嬢を目で追い続けるだめなヲヤジ、のような状態で、ブルテリアに釘付け続け。




隠し撮りブルテリア



しかし! 諦めてそろそろ帰ろうかな、と立ったとき、この天々ちゃん(注:ブルテリアの固有名)が手をぺろぺろしに来てくれたのです。
思い切って抱き上げたら、重っ! 小さな体なのに、石のような重さに吃驚しつつ、お膝へ。
重みが心地よく、膝が痺れてほかほかします。
幸せすぎて死ぬ………。




二葉亭四迷は I love you を「死んでもいいわ」と訳しました!




マイペースの天々ちゃんは、一度膝にぺったりしたなら、よそで物音がするなどしても動じずそこでじっとしています。その落ち着いたご様子(ちょっとまめ子を思わせます)、ぶたっぽい鼻息や鼾、妙な重みも最早いとおしく、短毛でさらさらのお背なを何度もなでなで、最後は長いお鼻にチュウさせてもらい、にやにやしながらお腹いっぱいでお店を去りました。
なお、このお店では、気に入った犬を身請けすることもできるそうです。

金銭を介した愛はいつも複雑であるのに、しふぉん主義下の犬愛には、度々金銭が関わってきます。
さんざん風俗で癒された後に家庭に還り、やはり妻がいちばんだ、とほざくヲヤジのような自分に疑問を感じつつ、わたしは犬カフェから帰り、どのいぬも最高やけどやっぱりうちのいぬがいちばん、と、無料犬なれど撫で放題のまめ子を撫でたのでした。