昨日、近所のセブンイレブン行ったんです、セブンイレブン。と、いにしえの吉野家コピペの出だしで始めてみたものの後が続かない、もういいや、セブンイレブン行ったんですよ。で、よく見たらなんかワゴンセールやってて、ひとくち焼きショコラマンゴー、とか書いてあるんです。マンゴーだよ、マンゴー。いやもういいって。
● 当該物件を購入する
そんなわけで先日、「ひとくち焼きショコラマンゴー」という菓子をセブンイレブンで買ったのでした。昨今少し甘い物を控えておりまして(以前と比べるとですが)、そんな中、でもこれは美味しそう! ということで買ってみたんですね。翌日は一日在宅ワークの日であったので、仕事の合間に食べよう、と愉しみにしていました。私はチョコも大好きだしマンゴーも好物。セブンのプライベートブランドのチョコレートはずっと当たりだったから、コレも美味しいに違いありません。
● 事件発生
そして翌日、惨事は起こりました。
臨場感をお伝えするため、リアルタイムでの自分のSNS投稿を貼り付ける形でお送りします。
書いている通りでございます。前夜買ったチョコを一粒うきうきと口に放り込んだわたくしがまず思ったことは、「なんかの間違いでは……?」ということでした。口の中で溶けてゆくにつれ、腐った牛乳のような味、えもいわれぬ人工的で不快な香り、そして粘液めいた吐瀉物のような後味……。これは、腐っている? いやコンビニで買ったばかりのチョコが腐ってるなんてことある? 不良品? いや私の味覚がおかしくなった??……そこで商品名をツイッター検索してみたところ、同様の困惑・混乱・憤りに駆られている人々の投稿に出会ったのでした。やっぱそうなんだ!!
「ドリアン羊羹」というのはかつて研究室時代に一同を震撼せしめた伝説の菓子です。海外土産で誰かが買ってきたのでしたが、口に含んだ次の瞬間ダッシュして鴨川に吐き出しにいった後輩の姿が忘れられません(※鴨川で花見をしているときだった)。
ゴムライスと段ボールおでんの件に関しては、以前に『フード性悪説アンソロジー』のショートエッセイでも書かせていただきましたが、またどこかで詳しく書きたいと思います。ともあれこれが、「やわらかゲロ石鹸」命名の瞬間でした。
一連のポストからは、わたくしめがダメージを受けながらも妙にハイテンションになっている様子を感じていただけるかと思います。この後、尾を引くゲロ石鹸の後味に悩まされながらも私は、なぜか次第にハイになってゆきます。
お分かりいただけましょうか?この感じ! 当然不味いものなんかより美味いもののほうが好きなはずなのに、なぜか不味いものに出遭うとテンションが上がってしまう! そして不味いものの不味さについて書くの、めっちゃ楽しい!!! 美味しいものの話を書いても面白くないけれど、不味いものの話を書くと盛り上がる! それも、「カキフライソフト」とか「マウンテン」とか知っててわざわざ被弾しにいく系のやつじゃなくて、コンビニで美味しそうな見た目で売られているチョコ系菓子がまさかの不味さ、という野生のマズとの出遭いです。これは興奮しても仕方ないですよね。
中学生の頃から聴き続けているブルーハーツの曲……その歌詞がやっと真に理解できた瞬間でした。ちなみに投稿時間を見ていただければお分かりの通り、この時点でほぼ1時間不味い菓子について語り続けています。その間、後味およびその後もしつこく残り続ける幻味のようなものに悩まされ続けていました。いや、仕事しろや。
夜になってもマズチョコの話をしています。
不味さによってなんかが破壊されたのか、日付を2日も間違っています(実際は9月5日)。なおこの後どうしてもふた粒目を口に入れる気にならず、ひとくち焼きショコラは今も冷蔵庫で眠っています。
● 友ら、続々マズチョコを買いにゆく
さて、その夜から、私の一連投稿を見た友人たちが続々セブンイレブンに走りマズチョコを狩りにゆくという現象が始まりました。この感想を見てわざわざ金を出して不味い体験をしてくれるとは………なんと物好きな、いや、良い友を持ったものかと本当に感動しました。
売り切れの(あるいは置いてない?危険物だから?)セブンもあったようで、ある友人は、わざわざ何軒か回ってなんとか入手。物好き……良い友達過ぎます。
さて、その結果、何人かの友人の感想は私と同様でしたが、意外にも「大丈夫」という人もあり、意見が分かれました。以下、公平を期して大丈夫派の声も含め、ここまでに得られた感想を記しておきます。
ヤバい派のご感想:
さーもん氏: 最初は大丈夫だが咀嚼するうち吐瀉物味に。後味は完全なゲロ。菓子の概念が分からなくなった。
T氏(不味みソムリエ): 遅効性の毒。口に入れた瞬間は大丈夫だが後味でじわじわ来る珍しい不味さ。体験したことのない不味さで満足。
T氏の息子氏: 食べられるけど美味しくない→もう無理
M氏 : 食べてはいけないものの味。車の芳香剤。
妹氏: えっ……うわっ……うぇ
大丈夫派のご感想:
P氏: 大丈夫、いける。でもゲロの味というのは分かる。この後味はダメ。全然大丈夫というわけではない。
姉氏(不味みソムリエ): 大丈夫。完食できた。さわやかサワデーの香りが鼻に抜ける。
TF氏: 全然普通に食べられる。普段甘いものを食べないので美味しいと思った。
ヤバイ派・大丈夫派の中でもグラデーションがあり、また、両派ともに「ゲロ味」と「芳香剤ぽい香り」は認識されていることが分かります。大丈夫派の人たちがなぜか皆、「大丈夫だった、残念……」という反応で可笑しかったです。なおこれ以外にも、「セブンが近くになくて残念」「セブンが近くになくて残念だな~~~あ~~~本当に残念だな~~~」などのお声をいただいております。
● ネットの声
さてその後、私はといえば、ツイッターで商品名を検索するのが日課のようになっております。
日々被害者が増えているようですが、不味さに憤る皆さんの表現力がすごい! 上に述べたような「ゲロの味」「石鹸の味」という表現の他にも、さまざまな言葉で不味さが語られ、そうそう! と共感したり表現の絶妙さに唸らされたり……「美味しめのゲロ」(!!)と書かれている方を見たときはあまりの絶妙さに感動しました。
上の投稿で自らも書いていましたが、どうも、不味いものというのは人の言語能力を活性化させるようです。かつて作家・稲垣足穂は「胃袋を重くすることにかかわりのある用件は、すべて支持することはできません」と言いました。こういうことだったのでしょう。たぶん……。
さて、さんざんマズチョコ呼ばわりしてセブンに怒られないか心配ですが、怒られ回避のために付け加えるわけではないですが、私は、多くの人が憤ったり謎を感じたりするほど不味いものが世に出てしまうというこうした事態をむしろ愛しています。今回の事件では大変愉しみと学びを得たので、これからもセブンの菓子は買い続けたいと思います。それに人の味の好みは多様ですしね。それにしても、ネットを見ていると、発売初期は「美味しい」という感想が多かったようですが次第に不味い派が増えていくのが気になります。途中で何かあったのでしょうか………?? この商品、いつまで店頭にあるのか分かりませんが、気になった方はぜひ百数十円を投げうって感想を聞かせてほしいです。いや、ここで「素人にはお薦め出来ない」というべきなのか。