I wanna be your dog

なんか犬関連書籍ばかり紹介している気がしますが。今日は犬小説を。




松浦理英子の長編小説『犬身』を読みました。
帯には「あの人の犬になりたい。」とある通り、主人公は子供の頃から「犬化願望」を持ち続けてきた房恵。
彼女は、性同一性障害ならぬ「種同一性障害」、「ドッグセクシュアル」と自身を定義します。
ヘテロでもホモでもバイでもないセクシュアリティを描こうとした作品であるわけです。


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先日、けんきう会でフロイトの「ペニス羨望」なる概念について議論した際に、尻尾羨望やったら分かりやすいんやけど......という話をしたのですが、まさにこれは、(ペニス羨望への控えめな異議としての)尻尾羨望の物語であるなと思いました。
また、けんきう会では、やはり松浦氏の『親指Pの修業時代』を紹介したのですが、『犬身』は『親指P』と共通する部分も多く。
牡犬になったフサは性器を勃起させますけれど、それはダンコンチュウシンシュギ的文脈から切り離された、尻尾的ペニスであるという点で、『親指P』の親指ペニスと似ています。


が…。
実はわたしは、梓の物語に焦点が当てられて性や暴力や家族といった主題が前景化する後半よりも、房恵が異常な犬好きっぷりをとっぷり語りまくる前半のほうが好きです。
いろんな犬描写は、読むだけでいぬいぬした気持ちになってきます。
「犬浴」(=犬散歩時間帯に川に行くこと)なんて語もナイス。わたしもよくやります。そしていい犬浴ができた日はいぬいぬ〜っとした気分になれます。
雑種犬を集めた「犬咲村」なども想像するだけでいぬいぬしてきますね! 犬撫でコンテスト、甘噛み体験……嗚呼、犬咲村に行ってみたい!



そして読み終わった後、今までよりまめ子をいとしく感じているじぶんを発見しました。
まめ子も、フサが梓を思いやっていたように、飼い主を愛してるとか守りたいとか思ったりしてくれているのかしら……などと想像して。
まあそんなこと思っとらんに決まってるんですがね。






まめ:「……何か?」