切支丹遺蹟博物館など

そんなわけで先日名古屋出張だったんですが、東別院あたりの地図を見ているとふと、「切支丹遺蹟博物館」との文字が目に入り、調べてみるとお寺の中にあるというので、「なぜ寺にキリシタン?」と気になって行ってみました。

 

このあたりは東別院・西別院を中心にたくさんのお寺があり、ちょっと故郷を思わせてホッとします。

そんな中のひとつ、栄国寺というお寺の中にその博物館はありました。

 

 

栄国寺の門。幼稚園もあってなんか可愛らしい。

 

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門を入ったところ 


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解説によると、このあたりはもとは刑場であり、1664年に隠れキリシタンたちが処刑され、その菩提を弔うため建てられた、という由来だそうです。


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境内に入り、奥まった通路を抜けたところに「切支丹塚」があります。

関係ないんですがこの看板の字体メッチャ好きです。境内、この字体の解説看板がたくさんありました。


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ケースに入れられた墓石、明治とあるので殉教キリシタンのものではないのでしょうか、十字架が刻まれています。後ろにはお地蔵さんが並んでいますが、お寺の解説によると、地蔵=ジーゾースの隠し名であり、地蔵にイエスが仮託されていた(!)とのことです。 

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カトリック名古屋教区長の名での顕彰碑です。寺内に「カトリック」の文字があるのはなんとも不思議な感じ。


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ライオン像もいましたが由来は分からずでした。


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こちらも解説がなく、由緒は分かりませんでしたが、「平和塔」と書かれた碑です。

この近くに「平和」という地名がありますが、関係があるのでしょうか。


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お庭の中に、博物館入口がありました。

「佐藤銈一コレクション」とあります。この人は地元の古美術収集家で、その寄贈から博物館が始まったのだそうです。


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ちなみに「火消文化資料室」というのも併設されています。切支丹と火消、どないな組み合わせやねん、と思いましたが、ここの本尊の阿弥陀さんが「火伏」の御利益をもつとされていることによるようです。

 

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……そしていざ、庭を抜け、切支丹(+火消)博物館入口へ向かうと、博物館というか、これ、「おうちの一角」じゃないですか! どうもお寺の方の住居らしき建物があり、インターホンを鳴らして入れてもらう式。

ドキドキしながらピンポンを鳴らしたところ……返事が無い。

ああ~またも閉館力を発揮してしまった~、またの機会に来よう…… と帰りかけたのですが、いやしかしこのあたりに来ることなど滅多にないしなア、と、ダメモトでお寺に電話をしてみました。電話には幼稚園の方が出られ、「お寺の人は今出かけているがすぐ帰ってきます」とのこと。数十分そのあたりをウロウロし、戻ってくると、無事開けてもらうことができました! 電話してよかった!

 

中に入ると、本当に住居の一角を博物館として解放しておられる形でした。玄関で靴を脱いで上がります。入館料は100円。たしかに小さな博物館だけれど、お安い! 

その一室にひしめきあうように、私には初めて見るような展示物がたくさんありました。これは来てよかった……!

 

 

隠れキリシタンの不動版画だそうです。

梵字のように見える部分にJESUSのJやSが隠されています。

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マリア観音! 複数のものがありました。

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他にも、切支丹禁制を掲げる高札や真鍮の「踏絵」など、歴史の教科書でしか見たことのないものがありました。

踏絵は、当初紙製だったのが、踏むと破れるということで同になり真鍮になった……そうですが、踏ませるものにそんな手間をかけていたのはふしぎな感じがします。

また、分からないように十字架をあしらった武具や諸々の小物、また近世に西洋から渡来したものや西洋の影響を受けた絵……などなど。

 

  

司馬江漢が絵付けした湯飲み。ローマ字でサインが入っていました。

後ろの綺麗な瓶は阿蘭陀渡来のギヤマンだそうです。

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新聞記事が貼られていました。遠藤周作の小説「男の一生」にこのお寺のことが出てくるのだそうです。


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博物館は本堂の奥とつながっていて、入館料の100円で本堂も見せてもらうことができます。

この日は、私以外に人もおらず、がらんと静かな本堂に、少しだけ日が差して、風の音に混じり隣の幼稚園の声が聞こえ、良き時間でした。本尊の火伏の阿弥陀さんの他、体内に五臓六腑が収納されているという仏像や、(どこにあるのか分かりませんでしたが)円空仏もあるそうです。円空が殉教切支丹の慰霊のための仏像を彫った、という話を初めて知りました。本尊の周囲の装飾が、「デロリ」的な派手な色合いで素敵でした。

 また、そうした貴重なものの他に、ちょっとした小物や置物が端々に飾られているのもよかったです。博物館から本堂に続く通路、仏具にかけられた可愛い布たちは、本堂の装飾と通じるような色合いでしたが、もしやお寺の方のお手製パッチワークなのでしょうか。あちこちに貼られた手書きの説明文含め、私の好きなタイプの、手作り感あふれる空間でした。


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帰るときはもう一度インターフォンを鳴らして戸を閉めてもらう形。パンフレットを一部買って出ました。

 

お庭にある灯篭は「切支丹灯篭」。たしかに柱の部分が言われてみれば十字っぽくなっています。

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解説によると、古田織部が考案した形であることから織部灯篭とも呼ばれるそうですが、これは、森鴎外の別邸にあったものだそうです! おかげで、そういえば未読のまま気になっている『鴎外の降誕祭』(クラウス・クラハト、克美・タテノ=クラハト著、NTT出版)を読まねば!と思い出しました。

 

こちらもお庭の植物に無造作に埋もれていますが、十字の形が浮き彫りにされています。


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 博物館に置かれていた来館者用のノートを見ると、キリスト教関係の方が団体で訪れることも多いようでした。キリスト教界隈では有名なお寺なのかもしれませんが、私はすべて初めて見るものばかりで、来てよかったです。

脈絡は分からないが境内のあちこちに置かれたオブジェや、ちょっとレトロな説明看板も好みで、スッカリ好きなお寺になりました。


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以下は、この前後に近くをぶらぶらして見つけた諸々です。

 

 

栄国寺から歩いてしばらくのある公園にあった立札。「おためし場腑分けの跡」。


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「おためし場」って一見愉快な響きですが、近くに刑場があったことによるのでしょう。腑分けの頃には刑場は他へ移されていたようですが、やはり刑死者の遺体が使われたのでしょうか。

 

大須の方に歩くと、「豊川陀枳尼天」の旗を掲げる寺あり。長福寺という小さなお寺でした。

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以前に訪れた名古屋大仏もそうでしたが、名古屋の寺社は、なんとなくデロリの色合いが強い気がします。

 

 

こちらは神社。金山と東別院の間にあった神明社

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灯篭に貼られた「みかん」が気になります。


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郊外の街並みの中に現れた、コメダ平和店で一休みして帰りました。地名がいいですね。

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店主さんらしき人とお客さんが会話していて、「全国チェーン化以前の姿」という感じのコメダでした。

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