京都市電のレコード

レコードが若人たちの間で流行っているようですが、何年か前、我が家にもレコードプレイヤーが導入されました。

レコード道楽はハマると歯止めが利かなくなるのでセーブしつつ愉しんでおります。アナログであるからか、CDに較べ耳が疲れにくいような気がします。といってもレコードとCDの音の違い……とか明確に分かるほど耳がよくは無いので雰囲気のものかもしれませんが。しかし単純に、ジャケットがでかくて愉しいとかなんか存在感があるとかそういう良さがあるのはたしかで、(この買い方をし始めると部屋が終わってしまうとは思いつつ)ジャケ買いに勤しんだり、「CDでは聴かなかっただろうけどレコードだとなんか聴きたくなる」ものを発見したりしております。

 

先日は京都市電のレコードを買いました。『思い出の京都市電』(1979)、私の生まれ年に発売された盤です。

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京都市電の話は、親からよく聞かされましたし彼らは未だに東大路のことを東山線と呼んだりもしますが、私自身はちょうど市電とすれ違いで生まれてきたためその姿を知りません。

このレコードは、6系統が京都駅から烏丸車庫までを走る音をひたすら収録したというもの。そういうものが好きな人がいることは知っていますが私自身は鉄オタを名乗れるような者ではないので、たぶんこれがCDだったら聴かなかったと思うのです。まさに「レコードだとなんか聴きたくなる」盤です。聴いてみると臨場感があって、(今の風景とは少し違うであろうとはいえ)東山線の風景が目に浮かぶよう。電車の音だけでなくお客さんの声も入っており、清水寺あたりでは今と同様バタバタしている外国人観光客らしき人々の声が聞こえ、丸太町あたりでは幼い子とその母親らしき人の声が聞こえ、何やら難儀な要求をする子に「アホやなあ」という母親のイントネーションがわが母のイントネーションとソックリでした。

 

高橋弘氏による気合の入ったライナーも素晴らしいです。文章のこだわりが強くてアツい。京都市電全廃まで後70日余り、その悲しさをよそに町は、日本三大奇祭の一つ、祇園祭のメーンエベントたる鉾巡行を明日に控え、明るく活気に満ちている」とか。

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東山線沿いの写真もたくさん掲載されており、ここはあそこやな、全然変わってへんな、というところもあるのですが、もちろん変わっているところもあり。

その中で、――これは私以外にはどうでもいい話なのですが――目を惹いたのが五条坂のあたりの光景です。「チェス」という喫茶店があったらしく、写真で見る限り馬の頭部があしらわれた看板が出ていたようです。なんでこれが目を惹いたかというと、私は子どもの頃「馬町」が怖かったのでした。現京都市バス206系統でも「馬町」は「五条坂」のひとつ南の停留所ですが(※市バス206系統は市電6系統の後継)、子どもの頃、「馬町」の名を聞くと、大きな馬の影が描かれた不気味な黒い看板が想起されて、そのイメージが恐ろしかったのでした。大人になってフロイトのハンス症例(馬恐怖症の少年)を読んだとき、まさにこの「馬町」のイメージを思い出したくらいです。

しかし馬町にそんな看板は無かったので、自分の想像が勝手に作り出したもの、と理解していたのですが、もしかしてこの「チェス」の看板のイメージだったのでは!? ぜんぜん記憶にありませんが、「チェス」はいつ頃まで存在したのでしょう。知ってる方があればお教えください。