久しぶりに京都東山を歩きましたら、すっかり観光客が戻っていてみっつみつ状態でした。自粛警察は何をしているのか? スカスカ京都は束の間の幻でした。
新しいカフェや土産物屋がたくさんできているのも、隔世の感でした。今はインスタ映えで有名になった庚申堂が人気のようです。10年ほど前は誰もいない場所だった気がしますが、華やかなレンタル着物に身を包んだ若い男女で賑わっており、五重塔より人気でした。
五重の塔を南側から。
塔のふもとに共産党の九条ポスターがあるのが、いかにも京都市って感じです。
やはり人いっぱいの産寧坂から安井に抜け、久々に安井金毘羅宮へ。
銀杏がきれいでした。
ひと頃、わたくしは絵馬収集を趣味としておりまして、このブログの絵馬記事にはけっこうなアクセスがあったのでした。その頃、安井金毘羅宮は、いつもほぼ人がおらず、日暮れ以降に立ち寄るとなんとも寂寥として少し怖くもある雰囲気でした。
が、現在は当時の雰囲気は既になく、多くの観光客でにぎわっています。参道入って右手のラブホテル街の看板が樹々の合間に見える様子が淫靡で好きでしたが、ホテル街も多くのホテルがなくなったようで、かつての光景はもうありませんでした。
(2013年の様子:https://maternise.hatenadiary.jp/entry/2013/09/21/074809)
境内の灯籠にラブホテルの名が書かれているのも好きでしたが、今はそれも朱で塗りこめられたようで、見えなくなっていました。
かつてはくぐっている人を滅多に見なかった縁切り碑ですが、今はくぐりたい人が列を成し、こんなシートまで敷かれていました。
わざわざこんな注意書きも!
この注意書きは、碑から離れた本堂の脇に貼られていたので、そこまでぐるりと列がとぐろを巻いたときのためのものでしょう。
何年か前に新しいお社ができて「おお、儲けてるんやな…」と思ったのでしたが、また新しい何かが建つようで、工事中でした。
そしてなんと!
絵馬の前には、絵馬ブロガーに釘をさすこんな掲示が……!!
いろいろ思うところはございますが、これを以て、当ブログの縁切り絵馬収集は終焉となりました。
なお、「これだけポピュラーになったのなら絵馬の内容も薄くなったんかな?」と思って見てみましたが、こちらはやはり往年のあれこれが生き残っていました。観光化される中、ガチ祈願の人も変わらず存在し続けているのでしょう。人の情念よ、永遠なれ、です。そういえば先日読んだ、鷲田清一『京都の平熱』(講談社学術文庫)にも縁切り神社について書かれたくだりがありましたので引用しておきます。2007年の文章のようです。
先だって訪れたときは、これまでにない強烈なのに出くわした。呪いの絵馬。いまだ迫力でこれをしのぐものはない。夫の若い愛人のスナップ写真数葉をぶら下げたもの。写真の上にサインペンで、呪い、恨みの言葉がぎっしり書き込まれていて、愛人の顔が見えなくなっている。これには思わず目を伏せた。黒の千羽鶴。千羽鶴を墨で染めたのか、それとも黒の色紙だけで折ったのか。とすれば、ずいぶんお金がかかったろうに……などと見入っていると、やみつきになってまた来るはめになる。祇園で呑んだ帰り、酔いさましにこれまで何人案内したことか。(pp.50-51)
本書にはこの後、「都市はいま空襲を受けている」という話も書かれているのですが、まさに、今の京都の状況だな、と思いながら読みました。
裏の門から出ると、まだなんとか、ラブインとサンデーブランチが生き残っていました。ラブインとサンデーブランチよ、永遠に……。