テーマを決めてチェンソの話をする(5)10巻とモルカー

2021年はチェンソーマン10巻で幕を開けましたが、皆さま、ご無事でしょうか。私のもとには、「読んでいた妻が突然号泣嗚咽し始めた」などの情報が入っております。赤が効いた正月っぽい(?)表紙、美しかったですね。ですね……。

 

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10巻は、中二病心をくすぐる「眷属」の紹介や、ゾクゾクする「租唖」「アーノロン症候群」のくだりも大好物ですし(ここでこれまで「核の悪魔」がいなかった理由も分かり おお~!となりました)、可愛い犬たちが最大にイヤなタイミングで登場する演出も、マキマ部屋のセレブ感も最高なんですが、やはりなんといっても目玉は、みんな大好きファミリーバーガーでしょう。なお、私は例の合宿で、つらみ師により、71話「お風呂」からファミリーバーガーを一気読みさせられ、不眠に陥りました。

 

ここまでの出口のない迷路をゆくような重苦しい展開から、真チェンソーマンの降臨、そしてファミリーバーガーへの流れ、超かっこよくないですか! 急に爽快な音楽が大音量で流れ出したような、雨空を切り裂いて花火が上がったときのような、そんなドライブ感です。本誌で読んだときはカラーページで、虹色の臓物が舞い散っているのも最高でした。

 

9巻は(前に書いた通り)最悪(最高)な名作ではありますが、(疑似)家族の暖かさや尊さ、そしてその崩壊、というのは或る意味ベタな物語でもありました。扉の向こうに抑圧されたデンジの過去も、衝撃的ではあるけれどもフロイト的にベタといえばベタで。ただそれが最高(最悪)な演出で描かれ、その中で読者たちは感情を揺さぶられ涙しつらみまみれになってきたわけですが、ここでは一転、誰も予想できなんだ展開が始まり、そこでファミリーバーガーという(疑似)家族の搾取や暴力性や偽善性や滑稽さが描かれて、かつそれがチェンソーマンにぶった斬られまくるのがたまりません。この回で、「タツキ、信用できる……!!」と思ったのでした。

親のいない(親を殺した)子供たちの物語であるのに、「パパママ大好きファミリーバーガー!」というフレーズも、空虚で皮肉で最高です。このタイミングでのコベニちゃん再登場も!

 

 

ところで、ファミリーバーガー以上に予想できなかった展開として、チェンソ読者たちが軒並みモルカーにはまっている、という謎の現状を記録しておきたく思います。

意味が分かりませんが、(私の観測範囲で)『チェンソーマン』を愛読していた人々が、なぜか今『PUI PUI モルカー』に心乱されているのです。これは令和一興味深い現象ではないでしょうか……一体なぜ……。

ご存知ない方のため注記しておくと、『PUI PUI モルカー』は『きんだーてれび』(テレビ東京、子供向けバラエティ番組)内のパペットアニメで、可愛いモルモット型の車(車型のモルモット?)たちが活躍するお子様向けのお話……のはずなんですが、どうしてなのか、なんというかこう、ファミリーバーガー感があるのです!

またモルカーたちの中で、その車性とモルとしての自我が葛藤してるぽいのもなんか……なんか……。たとえばモルカーは、自らの車性のせいで、見知らぬ人間に乗っ取られて銀行強盗に加担するはめになったりするのですが、それは……それは……すなわち雪合戦じゃあないですか!銃の魔人じゃあないですか!? 心乱れてきたので、チェンソとモルカーの類似性についてのこれ以上の考察は今後の課題としたいと思います。