『街角図鑑』/自己言及珈琲

最近アレのアレで巷で流行りの「ZOOM飲み会」というものをやってみて、普段一年に一度会うかどうかという友人と立て続けに(画面越しに)会ったり旧交を温めたりしているのですが、そんなこんなの中、学生時代の後輩K君(昔からたまに当ブログにネタを提供してくれていた)から本を薦められたので、早速読んでみました。これ! もっと早く読むべきだった!

 

『街角図鑑』三土たつお編、実業之日本社、2016

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私は昔からこういうもの――「こういうもの」のことをどう総称してよいか未だ悩んでいるのですが、ブログでいつも扱っているああいうものたち、路上観察の対象になるああいうものたち、考現学の対象となるああいうものたち……のことです――が好きで、こうして写真を撮ったりそれをコレクションしたりしてきたわけですが、インターネットの世界に触れてからそれをより体系的にコレクションしている人たちがいることを知り、わわーい!となったのです。それが一冊にコンパクトにまとめられたような本です。本自体も、細部までこだわりがあり、「ああいうもの」の趣きを醸しています。

 

編者をはじめとして何人かの執筆陣の共著でありますが、「ああいうもの」好きには見慣れた名前がちらほら。それぞれが、(おなじみの)パイロン、単管バリケード、電柱、信号機、のぼりベース、マンホールの蓋、路上園芸……などなどなどの章を担当されています。こうして目次の一部を見るだけでも、ある種の人たちはわくわくしてくるはずです。

私は「ああいうもの」が好きではありますが、主に、道で出会ったそれらの働きぶりや人の手の加えられぶりやひどいことになりぶりを楽しむ愛で方であり、工業製品としてのそれらにはあまり注意を払ってこなかったので、この本は、そうした自分があまり注目してこなかった面が百科事典的に整理されていて大変ありがたいです。また、もともと興味のあった分野だけでなく、なんとなく気になるけれど通りすぎてきたもの(たとえば送水口)にもはっとさせられました。これまでなんとなく見てきた世界が、分類され分節化されてゆくときの快楽よ~!!

 

 

そんな、いろんなそういうものが扱われている本書ですが、とりわけ私が好きなのは、大山顕さんが執筆されている「雰囲気五線譜」の章です。たしかに!あるある! そう、この「ちょっと気になってはいたけどカテゴライズしていなかったものが新たに名付けられカテゴライズされる」のも「ああいうもの」界隈の快楽ですね。

(なお、この章ではついでに「図形譜」という概念も知りました。めちゃおもろいですね!)

雰囲気五線譜はぜひ本書(あるいはデイリーポータルZの特集)を見てその面白さを確かめてほしいのですが、文中に書かれている、筆者が雰囲気五線譜を集めていることを知っていろんな人が採取した雰囲気五線譜を送ってくれる、という話がええなあ、と思いました。

 

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本の話ついでに私も、最近気になっている(正確にいうと以前から好きだったが最近そういうカテゴリがあることに気づいた)ものを挙げますと、「コーヒーカップの中に『コーヒー』とか書いてある喫茶店の看板」です。これって既に名付けられてますでしょうか? 名前があったらご教示いただきたいのですが、仮に「自己言及珈琲」と名付けて記事カテゴリを新設することとします。まだ採取数は少ないので、みなさんも自己言及珈琲を発見したらご一報ください。 

 

↓こういうやつ


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