ラストファンダンゴ、幸福なゴム焼きの夜

7月の初め、オータムス×Theピーズ×ワタナベマモル というイベントを観に、十三ファンダンゴへ行きまして、超幸せな夜であったので記録しておきます。
なんやつい先日もファンダンゴでピーズ観た話を書いた気がしますが、今度こそ(おそらく)ラスト十三ファンダンゴです。

今回のライブはそもそも、オータムスがピーズと一緒に出るという知らせをもろて、これは観にいかな! と応援のつもりで駆け付けたんでありました。オータムス、去年末にライブに呼んでもろて初めて観たらばかっこよくて、そのときにメンバーの方がTheピーズファンと知り、をを、憧れのバンドと一緒に出るなんてすごいやん! と。 が、行ってみれば応援もなんも、ひたすら愉しく幸せな夜でした。



トップバッターはオータムス。前回観たときから、メンバーが一人増えて賑やかになっていました。
オータムスは、私がかっこええと思うロックンロールのロマンチックさが詰まっていて最高。ちょい昔によく見た表現で、「ゴキゲンな」ロックンロール、てのがありますが、まさに「ゴキゲン」て感じの、ただ幸せな時間。
(エエ意味で)カッコつけた衣裳もいいですな!
このアルバムかっこよかったんでおすすめです。


次はワタナベマモル。マモルさん、ずっと名前は知っていたけれど、ちゃんと聴くのは初めてでした。グレイトリッチーズの人か! 今はずっと弾き語りなのかな?
「プリーズ・プリーズ・ミー」の替え歌……いや、「プリーズ・プリーズ・ミー」にそっくりな新曲(!)で、年金もらえねーえー♪ と、選挙前用ぽい曲やったんが、アジ集会みたいで楽しかったす。


はる氏は、はよステージに上がりたかったのか、マモルさんのMCの間ずっと階段の上から叫んでおり (「開演前に一緒に歯磨きをしていた」という話のときにずっと「歯じゃねえ!歯茎!」と訴えていた……そんなに伝えたい情報だったのか?)、マモルさんが終わるなり登場。
で、続いて、フツーにアビさんが登場!
アビさん、2年前の武道館以来ステージに姿を現しておらず、ピーズはずっとはるの独り弾き語りの形でライブをしていたのでした。先日東京でのライブに実に2年ぶりに出現、という報があったもんで、「今日もアビさん出るかもねえ」と連れと言い合っていたのでしたが、勿体ぶって途中から出てくるもんやと勝手に思い込んでいたので、不意打ち。まだ演奏が始まってもいないのにフロアからは大声援、あちこちからおかえりコールが起こり、この時点でもう既に胸熱状態に。


そこへきて一曲目が、「日が暮れても彼女と歩いてた」。
家を出る前になんとなく、今日はこの曲聴きたいな、と思っていたのだった……! 聴き馴れたイントロに、聴き馴れたアビさんのギターが乗り、その瞬間から、手と足と目の奥がフワッとして 「宇宙の実家に帰ってきた」みたいな感覚になったんでした。前にいたお客さんたちも、何人かタオルで目を拭ってはるのが見えました。
好きな曲があって、それが二人揃って演奏されるだけでこんなに素晴らしいなんてなあ。 「そんで最後は二人で 飽きるまでずっといたのさ」って詞も、ラブソングのはずなんですが、ステージの二人と重なるようで美しかったな。


その後、「一蓮托生ドロ航海!」で客たち一同水を得た魚(泥を得た魚)のようになり、そっからはもう、どの曲が始まっても、「おおお〜」と歓声が起きて、最高の連続。
どの曲とってもアビさんのギターはやっぱ泣かせるし、そのギターが横で鳴ってることで、はるの安定感がすごい。
特に嬉しかったのは、「次はちょっと気持ち悪いやつ」って紹介で始まった「ゴム焼き」。イントロの ♪ドゥーンドゥーンドゥーンドゥーン でまた歓声が起き、こんな重暗い曲でどよめきが起きるのは冷静に考えると変なんだが、私がこの曲に(大袈裟かもだが)救われてきた思い出があるんと同じように、思い入れがある人、いっぱいいるんだろな、と思いました。
歌詞で歌われてゆく息詰まるような情景と裏腹に、フロアからはゴキゲンなコーラスが起こり、演奏はポヤポヤとどっか気持ちのよい宇宙に連れてってくれるかのよう。音楽の素晴らしいところって、身体を消去して無重力にしてくれるような瞬間があるところだと思うけれど、この日のピーズは最初から最後までそんな感じで、そんな感じは久しぶりだったのでした。

ピーズの曲は、本来部屋でひとりでウジウジ聴くもんやと思うけれど、そうやってウジウジ聴いてきたであろう人たち(※決めつけ)が、こうして集まってその音楽を愛で合う感じもよかったな。
「やっと こんないいとこまで辿り着いてしまった お疲れさんだよ」、「続くよ まだ二人いる なんかまた作ろう 場所は残ったぜ」、そして「精々生きのばしてくれ」……ライブハウスで一緒になるお客さんたちは、同じもん観にきてるからって気が合うとは限らんし、友達になれるとも限らん他人だけれど、このときは、そんな言葉たちを一緒に大事に口ずさみながら、アー、今みんな同じこと考えてるよな、と可笑しいような気持ちになったのでした。
あ、古い曲だけでなくて、新しい曲もアビさん弾いてました。いつ練習したんや。
MCはいつも通り意味のわからん下ネタでした。
あと前回の「閉店詐欺」に続き、ファンダンゴのことを「引っ越し詐欺」とやたら言うてました(引っ越しは実際するので別に詐欺ではない)。


最後はオータムスとマモルさんが再登場し、みんなでセッションでした。
マモルさんのハモニカはよくはまってた(なぜかなかなかキーを教えてもらえず大変そうだった)。オータムスには、「うおお、がんばれ!」「ええなあ!」とバンド仲間から(?)声援が飛んでて、なんかよかったです。オータムス、ちゃんと準備してたんやな!
知人がピーズと一緒に演奏してるん見るだけでも胸熱だけど、曲は必殺「実験4号」と「グライダー」、こんなん泣くわ。
アビさんがフロアにダイブしてきて、全身からいろいろな感情があふれていて、「グライダー」ではやっぱり泣いてるお客さんがいて、たまらない気分になり、いつまでも終わらない演奏にのせてはるが最後いつまでも叫ぶように歌うのを聴き、ああ、こんなにガナりたてて歌う人だったか、と思い、客はグチャッとなりわたくしもグチャッとなり、自分は単に音楽聴いてるだけの消費者なのに、なんでかこういうご褒美のような夜があるんやな、とか、普段大袈裟なことはあんま思わんようにしてるんだけど、このときはなんかもう、「多幸感で死にそう」 という気持ちになったんでした。






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さて、ファンダンゴの夜からしばらく、やっぱピーズええなあ、としばらくピーズ聴き期が続いてまして、友人(※さーもんさん)と夜な夜な語らうなどポワポワし続けていたのでしたが、その10日後、本人ブログにてはる氏が食道がんにより療養に入るという記事がupされ、ええっ! と驚きました。
とても健康そうには見えない人ではありますが、なんとなく仙人のように思っていたので、病気とかするのか! という気持ち。
ファンダンゴのときには既に判っていたのかなあ。「グライダー」で、「10年前も10年先も」って詞を、「30年前も30年先も」って歌ってたのを思い出しました。


そんな病気この世からなくなっちまえや、という気持ちにもなりますが、ファンとしては、お医者さんががんばってくれることと、兄弟そろって長生きしてくれることを祈るばかりです。リスナーの勝手な希望としては、またピーズのライブが観たいし、年とってく彼らがどんな曲を作るのか聴きたいのです。
ファンの人たちのついったなど見ていたらば、みんな知らせに衝撃を受けつつ、ピーズの曲のあれこれを思い出して呟いていて、はるの言葉で衝撃を受けた人たちの心を落ち着けるのもまた彼らの歌なんであるなあ、と思いました。
その後闘病開始後のブログがいくつかupされ、いつもどおり独特すぎる日本語に、こんな日本語を書けるのもこの人しかおらんな、という思いを深めました。改めて、各方面において、ワン&オンリーのバンドであります。ここで言うてもしょうがないのだが、気長に復帰を待ちます。どうかどうかお大事に。医学がんばれ。