春の思い出(2) 台風クラブの演奏で「実験4号」などを聴いたんだよの巻


これももう2か月前の話になるんですが、4月に、十三ファンダンゴで最高なものを観たので以下記録。





十三ファンダンゴは、諸々思い出あるライブハウスでありますが(※注:上の写真の音符の壁はファンダンゴ近くの関係ない建物)、もうじき十三から移転の予定。
そこで、台風クラブTheピーズ、キイチビール&ザ・ホーリーティッツのスリーマンという最高な企画があったのでありました。
台風クラブは、近年知ったバンドの中でフェイバリット。Theピーズは、昔から大好きなバンドのひとつ。キイチビールは、知らんかったのでしたが聴いてみたらば好きな感じ。しかも企画はあの清水音泉

これは観にいかな、とそわそわしてたらば、あの床寝のプロ・さーもんさん(仮)も、台風クラブ(と清水音泉)を愛するあまり、北の国からはるばるやってきました。
よってわたくしにとっては 3バンド+さーもんさん という豪華イベントとなったのでした。
梅田で集合し、阪急電車の混み具合に「座れじの森…」と呟きつつ十三へ。まったくどうでもいいのですがこの「〜の森」というのは昨今の流行語(われわれ内での)であり、以下の記録に頻出することとなるでしょう。


♪ ♪ ♪


早く着いたのでプラプラとファンダンゴ前へ。
扉横の、演者の名前が貼りだされたポスターを、わわーい楽しみ〜! とスマホで撮影していたらば、ちょうどその扉が開き、あ、と思うや現れたのは、ピーズのハル氏でありました。
アコギを抱え、ステージで見るのと同様にめっちゃグニャグニャしながら、話しかけるでも独り言でもなく虚空に問いを投げるハルさん。「弦張り替えたほうがいいか?」。不意打ちの邂逅に「ををう…」と固まるわれわれ。コミュ力ある連れが「弦張り替えるの、面倒ですよね〜」と応じるも、「いんや、面倒とかそういうことじゃねえ……」 と言い残し去ってゆかれました。
何だったのか……。
ピーズを初めて観るさーもんさん、「初めてが、ステージじゃなくてそこらへんで遭ってしまった……」。

十三の路上に現われたハルさんは、この小汚い界隈にマッチしているようでもあり、どこかフワフワと浮遊しているようでもあり、この時点でわれわれは少し夢の中に迷い込んだ気分、すなわち、わからじの森状態に。




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近くで軽く飲み、18:00過ぎにライブは開始。
トップバッターは台風クラブ
台風クラブについては前に書いたのでよかったら読んでくれい。https://yaplog.jp/maternise/archive/1591
私はライブ観るん二回目でした。

落ち着いた、ちょっとお洒落めな曲を前半にかため、途中から加速してゆくセットリスト。だがお洒落めの曲の間から既に、いなさんのドラミングは凄かった(あれはどうなってるんや的な感想をその後さーもんさんと語り合いました。) また、前に見たときのいかにもバンド青年的な佇まいと違い、坊主頭でした。
前回聴いたグリーンデイのカヴァーをまた聴けたのも、前回聴けなかった「42号線」が聴けたのも嬉しかったな。これは誰が聴いてもかっこよくて愉快なロックンロール・チューンでありましょう。 「処暑」の入りでは、さああっと鳥肌が立ちました(比喩として、音楽で「鳥肌が立つ」というけれど、私は実際によく鳥肌が立つのだ)。前回のライブも、「処暑」を演奏し始めたとき、さああっと雰囲気が変わったのだよな。何か起こりそうなあのイントロ。何も起こらない歌詞なのになあ。

そして 「飛・び・た・い」 では、ステージだけでなくさーもんさんの様子を観て胸熱タイムでした。
去年の一時期、われら(さーもんさんと私)の間では、夜な夜なこの曲の演奏・歌詞・構成・メロディについてSNSで語り合い絶賛しあうというのが大ブームだったのでした。初めて生で聴く「飛・び・た・い」にさーもんさん、わりと静かに聴いてるお客さんが多い中、小さな身体でびよんびよん飛び始め、明らかにおかしな挙動に……全身に感動が溢れている!その感動が感染してくる!

そして新曲、「火の玉ロック」。そのタイトルからしてオマージュであるように、流れ星のように消えていった多くのロックバンドたちを謳った曲ですが、「僕らの世代のアンセム」感がすごくて素晴らしい。特に、

「そら予言通りの災難が 笑い飛ばした運命が じっと待つ一本道にアクセルを突っ込んでる」

というくだりと、その後のギターがほんとうに素晴らしく、神々しいような、泣いてしまいそうな気持ちになりました。石塚さんのヴォーカルがときどき裏返っていたのも逆に美しかったのでした。

自分が昔から聴いてるバンドはやっぱり、昔の曲に愛着があって、ライブでも昔の曲が演奏されるのを待ってしまうけれど、台風はこの新しい曲が一番よくて、あーこういうふうに聴けるバンドがまだあるなんて有難いな!という気持ちになったのでした。





最後はおなじみ「台風銀座」でみんな盛り上がって終わり、かと思いきや、ここからサプライズコーナーが!
ハルがステージに召喚され、ハル+台風でセッションが始まったのでした。さーもんさんと、セッションとかあるとエエな〜、と言い合っていたのですが、ほんまにやってくれるとは〜。そういえば石塚さん、以前インタビューで、ピーズを好きなバンドのひとつとして挙げてはりましたな。

「若者たちの時間を奪ってごめんなさいね」 と、相変わらずグニャグニャしながら出てきたハルは、台風クラブと並ぶとおじいちゃんと孫のようであり、まだ50代でこのおじいちゃん感は一体……と思いましたが、概ね意味不明な喋りの中、「前半は変わったコードがいっぱいでてきてこういう感じねって思ってたら、後のほうは段々クラッシュみたいになって、ふしぎな若者たちだな! 何者なんだ!」 と台風評は実に的確でした。

そして始まったのは「実験4号」。休止前、90年代ピーズの名曲……!
台風クラブの演奏で「実験4号」を聴けるなんて、そんな日があるなんて。
ピーズは、武道館以降バンド形態では活動していないので(ハルが「一人ピーズ」として弾き語りで活動)、ピーズファンもバンドセットで聴くピーズは、久々だったのでは。
客も拳あげて興奮、台風メンバーも実に嬉しそうで、特にいなさんはドラムを叩きながら満面の笑みでした。

さらに、キイチビール氏もステージに呼んで、もう一曲。
何やるんやろ?ベタに「バカになったのに」とかかな? と思うてたら、なんとダブルヴォーカルで「いんらんBABY」!! おおお……なんという渋い選曲!

「いんらんBABY」、エロで下世話な詞ではありますが、どうしようもなくダメかっこいい曲。もう20年以上も愛聴してる(しかも多くの人がこっそり愛聴してきたであろう)この曲が、みんなの大好きなヒットナンバーみたいに、こうして若いバンドによって演奏されて、皆で合唱してる(※異常な光景)なんて、もう感無量でありました。台風の演奏はピーズ完コピで泣けました。ギターソロのぐわんぐわんしたところ(分かりますか)とか、完全に再現されていた……リスペクトを感じる! 2曲だけのセッションではあったけれど、貴重な瞬間に居合わせることができ、夢のように幸せな数分間でありましたよ。
若手に負けじとハンドマイクで暴れるハルは、相変わらずグニャグニャと奇妙な動きであるのに流石のヴォーカル。そういやピーズのときはいつもベース持ってるから、ハンドマイクで歌う姿はほぼ観たことがないかも。前列にいたお姉さんが、終始凍り付くような、奇異なもんを見る目で見ていたのもツボでした。
そしてグニャグニャしたまま客席にダイブしてきた彼は、(前の人がよけたため)さーもんさんに直撃。小柄なさーもんさんが一生懸命押し返す羽目になったのですが、これ以降さーもんさんの情緒が本格的に混乱し、
「めちゃめちゃ軽かった」
「天使のような、神様のような人が降ってきた……」
「もう何も分からない……わからじの森……」
と口走り続けていました。


われわれがわからじの森に迷い込んでいるうちに、台風クラブが去り、一人ピーズ。
一人ピーズを観るのは実は初めてだったのですが、やはりハルはすごかった。
アコギ弾き語りなのに、ベース弾いてるときと同じグニャグニャした動きで、音もちょっとサイケデリック
新旧取り混ぜたセットリストで、聴いたことがない曲もあったり(新曲作ってるんだなあ)、聴きなれた曲もアレンジされて雰囲気が変わっていたり、弾き語りでやるとしっとりした曲になっていてなるほど、と思ったり。曲間にやたら「弦を張り替えてきたぜ!」と言うていたので、あの遭遇事件の後にやはり張り替えたようでした。
途中、複雑なクラップを始めた観客たちに、「そこまでは要求してねえ」とシンプルな手拍子に変更させるというピーズらしい一幕があり、さーもんさんがウケていました。
何度か、目の前のステージを見ながら 「このグニャグニャして奇妙な、痩せた変な人の音楽に、自分は何度も救われてきたんだよなあ……」 と思うと、ふしぎな気分になり、私もわからじの森の中に。


ここで私とさーもんさんは心身ともに燃え尽きたので前線を離脱。キイチビール&ザ・ホーリーティッツは後ろに退がって観ました。初めてちゃんと聴きましたが、ゆるふわ系なのかなと思うてたら、熱いロックンロールバンドって感じでかっこよかったです。登場のSEが「いんらんBABY」で、それでさっきこの曲やったんか、と合点。一曲目も「いんらんBABY」で、今日何回この曲聴くねん。でもこんなふうに若い世代がピーズが触れられるんはいいですな。
ステージはほぼ見えなかったのですが、ぴょんぴょん暴れている女性メンバーの姿がときどき見えて熱かったです。時々キラキラした鍵盤の音、ヴォーカルの声もいいね。


……という具合に、長い間聴いてきた音楽と新しい音楽が出会ったり、知らんかった良い音楽を聴けたり、夢のように愉しいひとときを過ごせたイベントだったのですが、この後、さーもんさん逆走事件やいまそかり事件などが起こり、われわれは更にわからじの森の中へ迷い込むこととなり、なぜか翌朝全身痛い状態で目覚め、「昨日はなんだったんだ…」「昨日はなんだったんだ…」と語り合っているうちにさーもんさんは国へ戻る電車を逃すなどしました。この数行は完全なる内輪ネタであるので、多くの読者(いるのか)には何のことかまるで分からない(すなわちわからじの森)と思いますが、そのうちさーもんさんがさーもんサイドストーリーを書いてくれる(かもしれない)ことを期待しつつ終わりたいと思います。


それにしても、ピーズ武道館を観たときも「ご褒美のような夜だな」と感じましたが、この夜もそんな夜でした。そしてありがとう十三ファンダンゴ
あとファンダンゴ近くの思い出深いミスドも閉店していて悲しやです。ありがとうミスド十三西口ショップ。