武道館でピーズを観たよ浄土を見ただよの巻

Theピーズが好きだという話は以前に書いたんですが、先日そのピーズの30周年にして初の武道館ライブに行きまして、てか人生2回目の武道館がピーズになるとは思いもしなかったわけであるが、ついでにいえば1回目がフラカンであるとも思いもしなかったわけであるのだが、そのフラカンの武道館で「次はピーズかな」というMCに「いやいや、ピーズは無い無い!」と苦笑ってたのが1年半前、まさかほんまにやるとは思いもせんかった武道館、「チケットは1人6枚まで」というガバガバな売り方に「客入んのか?」と勝手に心配していたらソールド・アウト、当日会場についたら既に酔っぱらっていい感じになってる人々がうようよしていたのでした。

ライブは、結論から言うて最高でありました。
その後ツイッターとか検索すると、「すごい幸福感だった、多幸感だった」「余韻が」「あの場所から帰りたくなかった」と言ってる人がいっぱいいて、次の日検索するとまだみんな「すごい幸福感」「余韻」と言っていて、一週間経った今でもみんなまだ「幸福感」「余韻」と言い続けていまして。
正直、最近のピーズのライブは、ゆるっとしてる気がしてて、演奏もなんかポワンポワンしてて、そんなでかい会場できるんやろうか、と思ってたのですがナメてました、さすがキャリア30年(休止期間あるけど)でありました。ポワンポワンしてた演奏は全然かっこよくなってたし、最初からすごい安定感だったし、何言ってるのかわからん上に陰毛がなんとかウンコがなんとかいうMCはいつも通りすぎるほどいつも通りすぎたし、何より、演ってる側も聴いてる側も幸せそうで、泣いてる人もいっぱいいて、ほんとうにあんなに素晴らしいものを見せてもらえるとは思わなかったです。




15年前のファンが見たら「コラ画像?」と言いそうな画像。武道館にピーズのロゴが。この前では「やっと法被ー」(※昔の曲名「やっとハッピー」にかけたグッズ)を着た人たちがひっきりなしに記念撮影してました。

暮れかかった6月の空にお花が立ち並んでるのを見るだけでちょっとキュン。ドロ舟乗組員からの花輪にはルパンくん(うさぎちゃん)のマスコットが。



ここにも手作り?ルパンくん。メッセージが暖かい。



「中学まではまともだったファン一同」からのお花には、これまでのジャケットが……!
もうこれだけで泣けるわ。うつくしいよ……



開演前、デビュー以来30年間の映像が前のスクリーンに映し出されており、30年前の、まだヤンチャなバンド少年めいたはるが「Theピーズ……です!」と言う映像から、ドラムの入れ替わり、ギターのアビさんの一時脱退、活動休止を経てそして復活……というピーズ史ダイジェストに、「ピーズのくせに小憎い演出しよるわあ」と思いつつ既にちょっと泣きそうに。「お父さんお母さんごめんなさい、またバンドを始めてしまうのでした!」という復活ライブの映像。人が音楽やめるか続けるかなんて個人的な選択やけど、しかしこんとき戻ってきてくれてほんまによかったねえ。


最初の曲は「ノロマが走っていく」。なんと地味な曲で始めるんや、と思いつつ、「ノロマ=30年かけて武道館」ってことなんかな…と考えてしんみり。最初は音響がぼわーんとして聞こえたので、一瞬あれれ、と思ったけれど、その後はぎゅっとタイトな演奏になって圧倒的でした。ここ最近で聴いたピーズの演奏の中で一番よかったです。
前半で惜しげもなく「とどめをハデにくれ」とか「鉄道6号」とかみんな聴きたかったであろう曲を披露してくれて最高や。
「長生きなんかするもんじゃねーよ、最低だ最低だ最低だ!」
最高やー。


2、3曲終わったところで既にアビさんが見たことのないような満面の笑みで、「ここに立てただけで大成功だよ!」とか言いながらなぜか服を脱ぎ始め、また始まったばっかりなのにもはやひとりで大団円みたいになっていて、会場もつられて多幸感に覆われました。
アビさん、一回ピーズ抜けてたし、今でもお仕事しながらバンドやってはるらしいし、いろいろあった人なんだろうな、今回はとにかくこの人が武道館に立ててよかったなあ!と思いました。
この日はとにかく、アビさんの演奏と笑顔が素晴らしかったのです。アビさんのギターはもともとかっこいいのでありますが、今回は満面の笑みでジャキジャキとやりながら、広いステージでギターを掲げたりダックウォークしたりアンガス・ヤングよろしく転がって回転したりで、職人ぽいイメージに反しちゃんとショーの人なんやな、でかいステージに立って遜色のない人やったんやな、と確認。
それにしてもとにかくあんなに幸せそうな笑顔の大人をここ最近ひさびさに、もしかしたら初めて見たかもしれんくて、それだけでこちらも幸せな気分になるよぅ、来てよかったよぅ、と思うたのでした。


他、スペシャル感あったくだりとしては、普段やらないコール&レスポンスなどがありました。しかし曲はまさかの「シニタイヤツハシネ」。
「シニタイヤツハシネ/シニタイトキニシネ/シニタイヤツトシネ/シニタイヤツハシネ」を、東・北・西・アリーナがワンフレーズずつ合唱するという謎趣向に、なんだこれー! 私、ライブでの一体感ってちょい苦手、マスゲームみたいの怖いし勝手に楽しみたいし、なのですが、フロアには一体感が生まれてるような生まれてないような、みんなでダラッとニヤニヤする感じがピーズの客らしくてよかったな。あと、ピーズのお客さん音程とるの妙に上手でした。



そして、言葉。
最近のはるのヴォーカルは何を歌ってんのか全然聴き取れなくなっていたのですが、今回はなんでか、言葉がはっきり聞こえて、ざくざく入ってくる感じだったのです。
たとえば、

「首を絞めた オラ首を絞めた 遠くまで自分までギュッと絞めた こんなにいい天気だったのに」(「映画(ゴム焼き)」)

たとえば、

「たしかに未来が昔にはあった」(「実験4号」)

それらはこれまで何度も聴いてきたことばたちで、もしかしたら歌詞書いた本人にはもうリアルな詞でないのかもしれないけれども、それを聴いてた頃の思い出、これまでしんどいときに何度もピーズの音楽を聴いてきたわけですがそれらの思い出がウワッと想起されまして、そうだそうだ、海辺でひとり焼いてたゴム、もう余生だ何もないんだと焼いてたゴム、日がな答案400枚にマルバツつけながら焼いてたゴム、数々のゴム焼きの日々が思い出され、んで、ハッと、ここにいるお客さんそれぞれにこんなふうなゴム焼きの思い出があるんだよなあ、と思ったのでした。そう、人は誰もゴム焼きの思い出をもつのである(格言)。

他、古い曲でうれしかったのは「オナニー禁止令」「クズんなってGO」「どっかにいこー」あたりでしょうか。このへんの曲はどれも大好きで、どれも最高でした。なんだかんだ20年寄り添ってる音楽なんだなあ。寄り添ってくれてる、っていうのはちょっと違う感じで、私が勝手に寄り添ってる感じ。「どっかにいこー」は脱力曲なのに、意外にコーラスが大変ぽい、ということに初めて気づきました。


比較的新しい曲たちも、今回すごくよかったです。
実は2006年以降の曲たちはどうもいまいちしっくり来てなくて、これまでライブで聴いてもそこまで好きになれなかったのですが、やっとこの日それらの曲が入ってきたという感じがしました。そっか、こんな曲だったんだ、とか、最近の曲はサイケデリックなのだな、とか。
最後のフレーズを照れ笑いしながら歌う「でいーね」とか、こんなかっこよかったっけ?こんな絶叫する曲だっけ?な「トロピカル」とか。トロピカルなのに。中でもかっこよかったのが「真空管」。もう出だしから、正確に刻むドラムの肋骨の間にギターのカッティングがボコボコめり込むみたいで、それがずっと終わらないみたいで、ずっと終わらないみたいだった。



本編の終盤は、一曲終わったかと思えば次もまた名曲が繰り出されて、しかもその名曲すべてに思い出や思い入れがあって、どれも大好きな曲で、ひとつ始まるたびにひとつ殴られるみたいで、いい夜だろう、忘れないだろう、嗚呼、あの曲だー!ウワーー!と、アホのようになっていました。
ピーズのセットリストはいつも、どうやって決めてるのかよく分からんのです。人気曲を後半に固めるとか盛り上がる曲と聴かせる曲で分けるとか特にそういう工夫もないようで、悪くいうとメリハリが無いのだが、それでも、曲が始まるたびにどれも最高で、その最高が延々と続いたのでした。


真空管」の後、はるが「みなさん生きのばしてください!」みたいなことを言い、本編最後の曲「生きのばし」の演奏が始まって、ここで我慢できず泣いてしまいました。
これ、15年前のピーズ復活アルバムの一曲目だったのですよね。演奏が素晴らしかっただけでなく、まさにこれを聴きながら「遠くの島、家族、平和、今に見ろ」と思っていた頃のことが想起されて、あー私もみんなも生きのばしてきたんやな、ピーズ戻ってきてリハビリ中断してくれてよかったな……とか思うと堪え難くなり。生きのばせんかった人もいるんやろな、とか。ステージもフロアもキラキラ見えて、このひとつひとつが今生の思い出、あの世へもっていく思い出やな……という気持ちになったのでした。
ピーズの音楽はぜんぜん上品じゃないし演奏している人たちもぜんぜん華やかではない人々ですが、どうして音楽は、しばしば浄土のような処へわれわれを連れて行くのでしょう。
更にそのあとアンコールで(時間が押してたせいか一瞬で再登場し、まったくありがたみのないアンコールだったのも最高だった)、「初めてこの三人で演奏した大事な曲」だという「底なし」が始まり、もう涙が止まらんなったのでした。



MCでどんなこと話した、とかは覚えるの苦手なんであんま書かへんにしときますね。感動的なことを言われちゃったりしたけど、他の音楽サイトとかに記録されてるしいいや。でも個人的にうふっと思ったのをひとつ書いておくと、「みなさん今日は金曜日で、すみませんね、みんな仕事やめて来てるんでしょ?」とか言ってたことでしょうか。
ピーズって、ダメな自分とか自己嫌悪とかばっか歌ってるのに、どこか、(みんながピーズのために仕事やめるほど)愛されてることを確信してる感じがあり、そういう、ヒリヒリしたところと甘ったれたところのバランスが魅力のバンドなんであろうなあ、それでみんな聴いてきたんよなあ、こういう奴はモテるよなあ、と思いました。


最後、客電がついての「グライダー」でもう一度堪え難くなって、たぶん客の大半の人がいろんなゴム焼き人生を思い出しながら泣いたり笑ったりしていて、演奏が終わっても、メンバーも客も立ち去りがたくて、「好きなコはできた」(これも大好きな曲!)が流れて客は手拍子したり踊ったり歌ったり無駄にうごうごしたりし、ステージではアビさんが床につっぷして口づけし、50代のおっさんであるはずのメンバー三人が手を取り合って輪になってくるくる回っている図を、阿呆のようにみんなニコニコしながら見守っているのでした。なんでだか分からないけれどダメの世界では、時折こうした不思議な音楽による祝祭が、生きのばした褒美のごとく起こるのでした。




※ 言いたいことはたくさんあるはずなのですが、いまいち文才に欠けるため、この日の思い出と多幸感をインビュー日記で表してみました。
https://twitter.com/imbyudiary/status/874316830214561792