トラウマ詣でとその幸福な結末


以前、子供の頃に食べたトラウマラーメンの記憶をサイトに書きました。

心的外傷と回復――或いはラーメンと私

要約すると、子供の頃まずいラーメン――今の言語で言うとどうやら「まずい」ラーメンだったらしい――を食べてしまったのだが「まずい」というシニフィアンが降りてこず発熱した、それ以来長らくラーメンを食べなかった、という思い出です。
ここでは伏字にしていますが、このラーメン屋の名は「8番ラーメン」でした。

その後、北陸を中心に展開するチェーンで同名の店があることを知り、京都にも一店舗存在することを知ったのですが、その8番らーめんが私のトラウマの8番ラーメンと同一のものであるのかは分からず、確かめるのも怖いので(というか再びあれを食べる可能性を考えると怖いので)いつもそっと前を通り過ぎるのみだったのでした。

ところが、これを読んでくれた友人(仮名:す氏とSさんとします)が、なんと、一緒に8番らーめんを食べにいかないかと誘ってくれまして、私は実に30年越しのトラウマ詣でに出向くことになったのでした!



さてその日は、颱風接近中の風の下、時折小雨が落ちてくる不穏な天候でありました。曇天の下を8番らーめんへ向かうわれわれ。
車を持っていないと少し行きづらい場所ですが、JR西京極の駅からてくてく歩きます。ちなみにこの日の話題は「ミソり」「心気症的癌恐怖」「鳥人間」などでした。
15分ほど歩いたでしょうか、国道沿いに8番らーめんが現れました。おおっ、ついにここに入る日が来たのか!とりあえず外観を写真に収める私。




お昼の時間帯を過ぎていたためか、お客さんはまばらでゆったりした席に座れました。特に綺麗というわけではない普通の街のラーメン屋さんですが、ごみごみしておらず、店内は良い雰囲気でした。しかしまだ気を抜いてはいけない、ここでトラウマと対峙せねばならないのだから……と気を引き締める私。おそらくこんな決意を以てこの店に来ているのは私だけでありましょう。
メニューを開くと、ラーメンの種類もサイドメニューも充実しています。やや地雷ぽい変わり種ラーメンもありましたが、名物メニューはシンプルな野菜ラーメンであるようです。
野菜ラーメンは、5種類から風味が選べるようになっており、その中に「バター風味」がありました。

これは!!
上の記事で書いた通り、私が子供時代に「8番ラーメン」で食べたのもたしかバターラーメン!!
京都ではあまりバターラーメンを見かけないので、同一店である可能性が高まってまいりました。
ここは、これ行っとかなあかんやろ。ということで、意を決して野菜ラーメンバター味を注文。


「自転車に乗れない」などの件について歓談しつつしばし待ちます。
水のコップや電気の傘が8番ロゴ入りで可愛かったです。
最近のラーメン屋にありがちな押しつけがましい説教ポスターなどもなく、快適。






待つことしばし、野菜ラーメンが運ばれてきました。バターが浮いています。おおおお!



す氏は、無駄にいいカメラで麺を撮っていました。




さて、30年の時を経てバターラーメンを口に運ぶ、緊張のひとときであります。
一口食べると、……美味い!! お野菜が美味しい〜!!
ぱぁぁぁぁ……と一気に幸せな感じに。バターの溶けたスープも美味しいですし、全体的に優しいお味です。麺は柔らかめのちぢれ麺で、私は堅い麺が好みなのではありますが、これはこれで美味しい〜!
わああああ、来てよかったーー!!
上の写真はちょっと薄暗く撮れてしまいましたが、食べ始めてからは、こんな感じ↓に見えました。




子供の頃のトラウマラーメンは、まるで底なし沼のようで、食べても食べても減らなかったのが印象に残っていますが(子供だったから、という理由も考えられるがしかし親も同様の感想であった)、今回は澄んだスープの中のお野菜と麺をぱくぱく食べました。
Sさん、す氏は、豚骨スープと醤油スープでしたが、どちらもそれぞれ美味しかったようで、「優しい味」「ふつうに美味しい」との感想。Sさんに分けてもらった餃子もウマーでした。




これで、金沢で8番らーめんに出会ってももう怖くありません! てか普通に入れます! 誘ってくれてありがとう、す氏とSさん。そしてありがとう、8番らーめん!!
おそらくこの店でこんなに感動してラーメンを食べていたのは私だけやと思うので、その感動をお店の人に伝えたかったのですが、私のコミュ力ではこの複雑ないきさつを伝えるのは無理があると考え、こうしてブログに書く次第であります。

それにしてもあの、子供の頃のトラウマラーメンは何だったのでしょう。
考えられる仮説としては、


(1) 同名だが8番らーめんチェーンとは関係のないまずい店だった
(2) チェーンの中で異常にまずい店だった
(3) こちらの味覚が未発達であるためまずく感じられた


ですが、(3)に関しては、私以外も複数の友人・家族より「まずかった」「食べた後腹を壊した」との証言を得ておりますのでこれは排除できるでしょう。(1)か(2)ですが、バターラーメン、味噌ラーメンなどのメニューがあったことから、かつての8番ラーメンはやはり8番らーめんチェーンである可能性が高くなってきました。よって現在(2)が有力です。ちなみにインターネット上では、あの店舗の情報については見つけることができませんでした。


ところでこのお店、うざい説教貼り紙などがない代わりに、なんだか壮大な貼り紙があるのが良かったです。那由多、不可思議、無量大数!??