トモフスキーを観てやっぱり大変な感銘を受けたよの巻


先日、イベントで、TOMOVSKYを観ました。
トモフスキー、ずっと好きなのですが、実はライブで観るのは初めて。
対バンのSAの後で出てきたトモフスキーは、SAとはうってかわってバンド全員弱そうで、しかし弱そうでフニャフニャなまま観客を魅了し始め、あーそうだった、こういうのを自分は格好いいと感じるんやった!と思い出し、非常な感銘を受けたんでした。


まだ持ち時間になってないのに一切勿体ぶらずステージに出てきて公開サウンドチェック。 「じゃ、いったん引っ込んで、俺が呼んだら出てきて」 と指示に従いいったん引っ込んで呼ばれてゆるゆる出てくるバンドメンバーたち。そして昔と変わらぬ甲高い声で、「歌う50歳!50歳!」。えっ、もう50歳?ていうか、これが50!?
部屋着のよーな変なピンクのズボンで、少年のごとく客席を飛び回って歌う50歳。ゆるいのに鬼気迫る35分間!
いきなり新曲「真夏」。シーズンに合わせて夏の歌をもってきたのか、と思いきや、「氷点下でも布団にもぐれば36.5℃」というような歌詞で、なんと変わってない!お布団の中のひとりの宇宙、これやーーー!と思ったのでした。


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私の中学生のときは、まだ、80年代「バンドブーム」の名残がありました。カステラというバンドは、その頃にそこそこ流行ったバンドでした。
誕生日に、ナメちゃんがなぜか「中古CD屋で何か買うたげる」と言い出し、カステラの『鳥』というアルバムを買うてくれたのが出会いでした。選んだ理由は、バンド名が変・ジャケットが変・安かった、などの単純な理由だったと思います。
カステラは、見た目はいかにも「バンドブーム」のときにうようよいたヤンチャな男の子たちで、そういうのは苦手だったはずなのですが、私はすっかり気に入ってしまったのでした。一見コミックソングのようでありながら、どこか理知的だったりハッと視点が変わるような詞がメロディに乗っていたりするのがよかったのでした。演奏も上手かったと思います。
(いつしかナメちゃんもハマり始め、ナメ邸で、今となってはレアであろうライブヴィデオ『HEY!外人』を観賞した記憶があります。今もナメちゃんはこのVHSを所有しているはずです。)


その後カステラは解散し、ヴォーカルであったトモが始めたソロプロジェクト(?)が「トモフスキー」なのですが、当初トモフスキー宅録テープ通販という形で始まり、私は中学生当時、通販でそれを買ったのでした。郵便振替でお金を送ると(1000円くらいだった)、いかにも手作業でコピーしました的な歌詞カードとペーパーがついてきました。
宅録だから音も弱くて音質もそんなによくなかったのですが、しばらく私はひそかな愉しみのように愛聴していました。


↓これがそれ



もともとカステラでも、メンバーそれぞれが作曲する中で、一番好きだったのはトモ作曲の「くさったジャム」でした。
スローできれいなメロディやのに、ひずんだ不穏な演奏。
で、高らかに歌われる、「友達が少しずつ減ってゆく/でも何もしないでお見送り/ちょっと先に行ったら悔やむのが目に見えてる事ばっかり」「人間関係はもう充分だ/新しい知り合いはいらないよ」ということばに、つねに最小限の人付き合いしかしたくないわたくしは、「うちの歌やんか〜!」といたく感銘を受けたんでありました。


宅録テープではその「ひとり」の世界が更に凝縮されていて、でもひねくれとか臆病とかでなくて、強くて自足した「ひとり」の世界が作られてたんでした。
「一時期ヒットしたバンドが解散して独りで再出発」みたいな悲壮感も特になく、ずっとそうだったかのように、その名も「ひとりあそび」という曲がある通り、ナチュラルに楽しそうに一人遊びをする様子が録音されてされていました。
カステラのバンドサウンドと違ってピコピコした可愛い音になっているのに、そのひとり讃歌、後ろ向き讃歌は力強く、「うしろ向きでOK!」とか「ウマが合わないのはそいつが悪いから/病気がちなのは病気が強いから/僕は悪くない弱くない/僕はこのままでいい」といった曲に、私は大いに励まされたのでした。


同時にもらったトモフスキー画伯のポストカードも気に入って、机の上に飾っていました。狂ったような夢見るような目をした男がひとり、ビルのてっぺんに腰かけて空を眺めている絵でした。友達を増やさねば、とか、ちゃんと人と合わせねば、とかいう価値観とは無縁のところでひとり充足している人、のイメージで、独りが好きだけれども独りで充足しきれない私は、ええなあ、こんなふうになれたらなー、とそれを眺めたのでした。(今思えばこの憧れは、パラダイサーへの憧れと同じものですな。)
さらに、その一人遊びの結果作られたディスコミュニケーション讃歌が、ちゃんとエンターテイメントになって、聴き手(私)に届いているところがすごい!


そして今回初めてライブを観て、その「一人遊びがエンターテイメントになってる」というのがずっと変わっていないことに改めて驚嘆しました。
宅録テープのときは、「30過ぎてこんなことやってる人もいるんやな〜」と元気づけられたのでありましたが――30歳といえば当時の私にとっては、ちゃんと社交もして家庭ももってたりする「大人」であって、そんな大人がひとりでちょこちょこテープ録音して手描きのジャケットをカラーコピーしたりしてるんや!とぐっと来たのでした――、それから20年経ち、50歳になってまったく同じスタンスという奇跡!
ステージ上では珍妙でフリーダムなパフォーマンスが延々と続き、彼の部屋での一人遊びが繰り広げられているかのようであるのに、それがちゃんとショーになっているという不思議。淡々と続く誰も知らない新曲。一人遊びなのにコール&レスポンス。
新しい曲もやっぱり詞がよくて、「不在」というのが特に好きになりました。「何かやってるときいつも次何しようかと考えてる、次どこいこうかと考えてる、つまりいつもここに不在」みたいな詞。で、またも、あ、私とおんなじや!とおもた。


家に帰って久し振りに昔のアルバムを聴き、変わり続けながらもずっと同じことを歌ってるんやあ、と感心すると同時に、当時ぶんぶん共感していたフレーズに相変わらずぶんぶん共感できることを発見し、自分の変わらなさにも思い至ったり。(※ぶんぶんとは頭部を上下に振る擬音語です)

♪ 私は退屈を知らない 自分の中から娯楽は吹き出す (「自家発電」)

♪ 人付き合いが今ひとつなのは 僕がそもそもカラッポだから

 ココロがないくせに ココロを開こうなんて無茶なコト (「ガソリン」)

♪ 見落とせ 見過ごせ 聞こえても 聞き逃せ
 幻想で 妄想で この部屋を満たせ    (「我に返るスキマを埋めろ」 これは何もかも名曲!!)



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ちなみにこの日のトモフバンドは、ギター・ドラム・キーボードがサード・クラスという方々(実は初めて知りました……見た目から学生バンドかと思ったらキャリアの長い人たちやった!)、ベースが双子の兄・ハルでした。
初めてこの双子が並んだところを見、こんなのが家庭に二人もいたとかすごいな……あと4人いたらおそ松さんやな……とか考えました。

ていうか、ハルのバンド・Theピーズも大好きでずっと聴いているのです。20代で一番よく聴いたアルバムはおそらくピーズやと思われます。
この日のイベントにはTheピーズも出ており、「生きのばし」を聴いてああー!となったりしたのでありますが、長くなるのでこの話はまたの機会に。

物販ブースにて、最近のピーズのCD(ライブ会場限定)をまとめ買いしました。そのへんで撮ってきたぽいジャケットが最高です。↓