「ペンはまだ僕を見放していなかった」

わたしが文具の中でもっとも好きな文具は、「ふせん」なのですが、Windows7 にアプグレードしたところ「ふせん」というアプリケーションが付いており、ぱそ上でも大好きなふせんを貼れるなんて というのが近頃の小さな喜びです。小さ過ぎです。

    


そんな2009年ですが、ブロガーっぽく今年の三大事件なんぞ選んでみますと、

・ 中川氏(ごっ君)の酩酊会見と急逝
大澤真幸、京大辞職 (なんだったんだよ)
福満しげゆき、父親になる

あたりが個人的に印象に残っているところです。


そんなわけで、今更ですが、福満しげゆき僕の小規模な生活(3巻)』の感想をば。
(ズボーン! トシャー!)


じつはこれ、わざわざ発売日に買いにゆきましたのですが(なんでそこまで)、その際、「山田詠美図書カード」 ――山田詠美ポートレートがあしらわれた図書カードでして、以前、『文藝』の読者アンケートでもらったはいいのですが、なんか熱烈なファンみたいだし恥ずかしいなアいつ使おうかなアとずっと使いそびれていた―― を、そうだ!これを使おう!と思いつき、やったやった!詠美で福満を買うてやったわ!どうだ、見たことか詠美!「処女と童貞は人間じゃない」と言うた詠美で福満を買うてやったわ! と、なんかよくわからない復讐心を満たしました。

――と、このようにいつのまにか福満サイドに自分を置いてしまっているわたしですが、が、以前も書きましたように、福満に言わせれば「(僕の読者に)女は存在しない」のであって、この巻ではその福満式歪んだ女性観が更に炸裂しております。
上っ面のインテリフェミニスト男が多い中、ここまで歪んだ女性観を晒してくれる人物はなかなかに貴重で、成る程、男の女性蔑視は自らの性欲への嫌悪と表裏一体になっておるのか、などなど、わたしは得るところが多うございました。そんな女性蔑視男による「女性の連携の困難」論が、皮肉にもフェミニズムの主張してきたことと一致しているのも面白く。
ただ、「若い女の編集者さん」は、ほんとうに気の毒です。
ふくみつに負けずがんばってください!


しかし三巻での白眉はやはり、妻の妊娠−出産をめぐる描写のあれこれでありましょう。
これに就いては詳しい感想は語らずにおきますが、妻が「僕」に妊娠を告げる大ゴマでは、不覚にもじーんとしてしまひました。昨今人の結婚の知らせ程度では何とも思わんようになりましたが、やはり、子ができるとなると感慨を覚えますね。前の世の契りや深かりけむ、ってことでしょうか。
表紙の構図も、『まだ旅立ってはいないのに』の表紙と少し似ていますが、あれは繊細な少年が独りうつむいて電車の中に座っていたに対し、こちらは、並んで座った妻の顔を「僕」が覗き込んでいる図であり、しみじみします。もう一人旅じゃないんだね。
ああ、あのモテなかった青春時代、大学の地下で独り過ごした日々、電話と文通の日々………そんな数々の記憶が走馬灯のように脳裏をよぎっ……たのですが、よう考えたら最近読んだばっかしの赤の他人の記憶やった。








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