名古屋デロリ紀行(2)

(前回のつづき)

大仏とペット供養塔を見て、デロリ&しんみりとしながらお庭へ戻りました。
そして桃巌寺本堂へ。
本堂にはいろいろいいものがあるよ、という情報を事前に得ていたので、是非拝観しておこうと思ったのですが、なんだか敷居が高そうでどきどきします。

京都のいかにもな観光寺と違い、ひっそりとひとけがなく、緊張感があります。
「御用の方は鐘を二回鳴らしてください」と貼り紙があります。
中ではふつうに法事が営まれている様子だったのでちょっと気が退けながらも、鐘を鳴らし数分待つと、お寺のおばさんが出てこられました。
拝観希望の旨告げると上にあげてくれましたが、なぜか突然「あんたの髪の毛、地毛?」と問われ、戸惑うわたくし。そして拝観料1000円徴収。高いよなア、と思っていると、それを見透かしたかのように、
「あんた、でもね、この1000円は価値ある1000円よ、色々なご利益があるからね、ほら、お守りも持っていきなさい、手作りのお守りなのよ」
と、白い紙に包まれたお守りを渡されました。さらに、
「あんた独りだから、もうひとつあげるわ。誰かあんたの好きな人にあげなさい、ご利益があるから」
というて、もうひとつお守りをくださりました。どうやら、ここにおまいりにくるのは、カップルが多い模様です。
そして、
「ずっと奥へ進んだところが弁才殿。それからぜひ屋上も見てね。カップルが何組か拝観しているけれど、その人たちに惑わされず、あなたはあなたの時間を過ごすのよ!」
と送り出されました。
いったいわたしはどこへゆくというのでしょう………



ふつうに法事をやってるお部屋を抜けて、奥へ進みます。
他人の法事に闖入するのは変な気分でした。
退屈したこどもがちょろちょろ遊んでいるのは、どこの法事でも同じようです。
天井は、「絵天井」になっており、鮮やかな色彩の絵が描かれています。非常にデロリ的な予感を感じました。




戸を開け、渡り廊下へ出ると、柱に貼り紙があります。ずっと思っていたのですが、このお寺は手書きの貼り紙が異様に多いのです。さっきからほのかに感じていた、パラダイス−秘宝館的雰囲気は、貼り紙によるところが大きかったのでしょう。かつて訪れた「淡路島なぞのパラダイス」も、パラノイア的えくりちうるの楽園でしたし。
貼り紙は、こちらに祀られている弁天さんの説明でした。
「弁財天を信仰すると知識が豊かになり弁舌さわやかにして開運し人生が明るくなる良縁にめぐり逢い又技芸上達す」
いいことづくしです。
特に、弁舌。口下手なわたしには朗報です。
一刻も早く弁天さんを拝んで弁舌をなんとかしたいところでしたが、しかしそのとき、中庭からなんだかおもしろそうな空気が流れてきました。
ので、まずは、渡り廊下を降りて、中庭を散策することにしました。




なぜかマヨネーズのチューブが落ちています。





かわいらしいほとけさま。






味のある木の根





そしてお庭の片隅に、をを、いらっしゃいました!
男女和合の直截的な表現ながら、かわいらしい石像です。



それにしても、飲み物が供えられているのが気になります。
飲むのか? どこから?




なんだかだんだん秘宝館的になってきました。
お堂に戻り、渡り廊下を抜けると、このお寺の目玉だという「ねむり弁天」像があります。
ねむり弁天さんは、硝子ケースの向こうに静かに横たわっておられました。
白いお肌がまぶしいです。胸乳も露わに、片手がそっと乳房に添えられている様子が色っぽいです。
撮影は禁止とのことでしたので、写真は撮りませんでした。たしかに眠っている人の裸体を勝手に撮るのはよくないですよね。
ねむり弁天さんを信仰すると、安眠でき、よい夢を見ることができるそうです。


そしていよいよ奥の弁才殿へ。
弁才殿には、たくさんの有名人による色紙が飾られています。弁天さまには技芸上達のご利益があるので、芸能関係の人もおまいりにくるようです。
そして、その弁天さまの周囲を見ると、数多の男根像・男女和合の像等がひしめいていて圧巻です。








名古屋だけに、しゃちほこ的な態位で交わっている男女像があったのが印象的でした。

後で知ったのですが、ここにおはしたのはそれぞれ「○○童子」と名があり、弁天さんの眷属ということになっているそうです。
それぞれにご利益があるのだそうです。
健康のご利益があるという「生命童子」のあたま(=亀頭)をなでていると、ちょうどそこへ、上品そうなおばあさんと幼い孫娘さんが入ってきてびみょうな空気が流れました。おばあさんは「えんむすびの神様なのよ」と説明し、孫は「ふうん」と納得していました。
さすが年の功だけあって上手いこと仰います。

圧倒されついでに此処でおみくじをひいてみましたら、洒落にならんほど悪かったです。


***

弁才殿を出ると、屋上へ続く階段があります。おお、これが、さっき見るように言われた屋上か、と思いつつスリッパに履き替えて上がります。階段は、ふつーのアパートの階段みたいです。
上がったところも一見ふつうの屋上…ですが、エキゾチックな塔が立っています。



小さな入り口をくぐって、塔の中を覗くと、歯を剥き舌を出した白い蛇が二匹、ぐるぐると絡み合っており、一瞬たじろぎます。「白竜霊神」とありました。
その両脇には、二体の「ラマ仏」(木彫り)が配置されています。
獅子のようなお顔です。
雌仏(女神?)と雄仏(男神?)らしく、女神のほうは巨大な乳房を片手に載せており、男神のほうはやはり巨大な陰茎に片足をかけています。二体とも、目を剥き、牙を剥き、長い舌をべろんと出した表情です。





あんまりの迫力にあてられ、しばらく屋上でぼーっとなりました。
屋上からは、本山のオシャレな街並みがちょっと見えます。
こんな街中にこんなお寺が………。


ところで、ネットで調べてもよく分からなかったのですが、「ラマ仏」ってどういう由来のものなのでしょう? チベット仏教の信仰ととらえてよいのでしょうか? お寺で尋ねればよかったのですが、ふらふらしながらお堂の入口へ引き返したとき既に人の姿はなく。詳しい方(しょちょう)がいらっしゃればご教示下さい。


***

入り口に引き返しがてら、また手書きの貼り紙を見つけました。

 「経典に『弁財天は天地の始め、陰陽の根源』と記されている。私たちの生活に、陰陽・善悪・明暗などの相対的出来事が多い。事業繁栄・家庭円満・良縁和合・芸事増進、特に精神的な論争はこの陰陽の不和による。いかに時代がかわっても尊厳性のともなわない性交は慎むべきである」

うぅ…… むずかしいですが、最後の一文にはナルホドとおもいました。
性においてひつようなのは、愛というモノサシだけでなく、尊厳というモノサシなのですよね、まめ子。




お鼻をからめあうゾウさん






帰宅後、いただいたお守り(ふたつ)の包み紙を、そっとひらいてみましたら、だいたい予想通りのものが出てきました。こんぢきに輝いていました。